研究課題/領域番号 |
22K16235
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
安田 英紀 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00806490)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ネフローゼ症候群 / 14-3-3蛋白質 / 糸球体上皮細胞 / Stratifin / 細胞骨格 / stratifin |
研究開始時の研究の概要 |
14-3-3ファミリー蛋白質に属するStratifinは、主に分化した上皮細胞で高度に発現する事が知られる、14-3-3ファミリーの中でも特徴的な分子である。Stratifinの発現低下は細胞増殖と腫瘍形成を引き起こす事が様々な上皮性腫瘍細胞で報告されているが、生体内での生理的機能の詳細はまだ明らかにされていない。また、Stratifinの発現は様々な上皮細胞で確認されているが、糸球体上皮細胞(ポドサイト)での発現は報告されていない。そのため、Stratifinの腎糸球体、ポドサイトにおける発現と機能を解析し、ポドサイト傷害を伴うネフローゼ症候群モデルの病態進行における役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
Stratifin (14-3-3σ)と他の14-3-3アイソフォームの発現と局在の差を明らかにするため、ヒトおよびマウスの培養ポドサイト、ラットの腎臓と単離糸球体でRT-PCR、Western blot(WB)、免疫染色(IF)による解析を行った。Stratifinと14-3-3βの発現は未分化型に比べて分化型培養ポドサイトで高い事を示した。腎臓内でStratifinは皮質、髄質に比べて糸球体で高い発現量を示したが、14-3-3βは同等に発現する事を明らかにした。糸球体内の各細胞マーカー分子との二重染色でStratifinはポドサイトとメサンギウム細胞の一部に発現し、14-3-3βはポドサイトに限局して発現する事を示した。また、ポドサイト内でStratifinは一次突起に発現するのに対し、14-3-3βは二次突起(足突起)とスリット膜の一部に局在する事を明らかにした。 次に、実験的ネフローゼ症候群モデルと傷害を誘導した培養ポドサイトで、RT-PCR、WB、IFによる解析を行った。糸球体におけるStratifin発現は微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)モデルで増加したが、巣状糸球体硬化症(FSGS)モデルでは減少し、アドリアマイシン(ADR)添加によって傷害された培養ポドサイトでは初期に発現が増加し、病態が進行すると低下する事を明らかにした。14-3-3βの発現はMCNSとFSGSモデル両方で低下し、ADR添加の培養ポドサイトでも低下する事を示した。 これらの結果から、ポドサイト内でStratifinは一次突起に発現するのに対し、14-3-3βは足突起とスリット膜の一部に発現するという異なる局在を明らかにした。また、ポドサイト傷害モデルにおける異なる発現動態を示す事を明らかにし、Stratifinと14-3-3βがそれぞれ一次突起と足突起の病態に関与する可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、正常な腎臓におけるStratifinと14-3-3βの発現と局在、ネフローゼ症候群モデルの糸球体における発現の変化を解析した。 まず、培養ポドサイトでStratifinと14-3-3βの発現が未分化型に比べて分化型で高い事を示した。腎臓全体におけるStratifin発現は14-3-3βに比べて低いが、腎臓内で糸球体におけるStartifin発現は皮質、髄質に比べて高かった。14-3-3βは腎臓内の各分画に同等に発現していた。糸球体内ではStratifinはポドサイトとメサンギウム細胞の一部に発現し、ポドサイトでStratifinは一次突起のvimentinと共局在を示した。糸球体内で14-3-3βはポドサイトに限局して発現し、足突起のFKBP12、synaptopodinと大部分で共局在し、スリット膜関連分子のPar3、nephrinとも一部で共局在を示した。この事から、ポドサイトでStratifinは一次突起に発現するのに対し、14-3-3βは足突起とスリット膜の一部に発現する事を明らかにした。 次に、ネフローゼ症候群モデルにおける解析では、14-3-3βはMCNSとFSGSモデルの両方で発現が低下するのに対し、StratifinはMCNSでは発現が増加したが、FSGSでは発現が低下した。更に、ADR添加によって傷害された培養ポドサイトで、14-3-3βは発現が低下するのに対し、Stratifinの発現は初期に増加し、病態が進行すると低下した。この事から、Stratifinと14-3-3βがそれぞれ一次突起と足突起の病態に関与する可能性を示した。 以上の所見から、Stratifinと14-3-3βのポドサイトにおける異なる局在を示し、ネフローゼ症候群の発症と進行において異なる役割を持つ可能性を示したため、本研究課題は当初の計画通りに順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
Stratifinおよび14-3-3βのvimentin、アクチン関連蛋白質との相互作用を解析し、これらの14-3-3アイソフォームのポドサイトにおける局在と細胞骨格関連分子との結合親和性の差の関連性を検討する。具体的にはヒト培養ポドサイトとHEK細胞への発現系を用いてStratifinおよび14-3-3βのvimentinとの相互作用を免疫沈降法によって解析する。同様にStratifinおよび14-3-3βのアクチン関連蛋白質FKBP12、synaptopodinとの相互作用を免疫沈降法で解析し、細胞骨格関連分子との結合親和性の差を比較する。 また、C. elegansの14-3-3ホモログであるPar5は極性形成に関与するPar蛋白質である。ポドサイトでPar3/Par6極性複合体はスリット膜に局在し、Par極性複合体とスリット膜複合体の結合はスリット膜のバリア機能の維持に不可欠である。スリット膜の一部に発現する14-3-3βはPar極性複合体と機能的関連性を持つ可能性があるため、14-3-3βとPar3の相互作用を解析し、Par3/Par6極性複合体への14-3-3βの影響を検討する。具体的にはヒト培養ポドサイトとHEK細胞の発現系で14-3-3βとPar3の相互作用を解析する。次に、培養ポドサイトで14-3-3βをsiRNAによってノックダウンし、Par3とPar6の発現と相互作用への影響をWestern blot法と免疫沈降法で検討する。 更に、14-3-3βとPar3、アクチン関連蛋白質FKBP12との詳細な分子間相互作用を検討する。具体的にはPar3を導入したHEK細胞における内因性14-3-3βとPar3の相互作用に対するFKBP12導入の影響を免疫沈降法で解析し、14-3-3βとPar3の結合が14-3-3βとFKBP12の結合と競合的であるかを検討する。
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