研究課題/領域番号 |
22K16249
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
菱田 英里華 自治医科大学, 医学部, 講師 (80742494)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 腎臓内科学 / Nrf2/Keap1 / 腎間質線維化 / 尿細管 / 腎血管内皮 / Nrf2 / 線維化 / 血管内皮 |
研究開始時の研究の概要 |
腎臓におけるKeap1-Nrf2系の活性化は腎間質線維化を抑制することが知られているが、詳細な機序は未だ解明されていない。本研究では、尿細管・血管内皮特異的Nrf2欠損マウスを用いて片側尿細管結紮モデルを作製し、解析を進めている。 これまでの検討では、尿細管におけるNr2欠損が腎間質線維化を増強する傾向を示した。今後、他の腎間質線維化モデルであるadenine腎症やNrf2活性薬(CDDO-Im)を用いて尿細管Nrf2の間質線維化に与える詳細な機序を解析していく予定である。同時に、MicroArrayを用いたNrf2活性化による間質線維化抑制に関与する責任因子の同定も進めていく。
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研究実績の概要 |
野生型マウス (WT; C57BL/6)を用いて片側尿細管結紮 (UUO)モデルを作製し、Nrf2活性化薬の間質線維化への影響を解析した。WTのUUOモデルに CDDO-Meの経口投与を行うと、生存マウスでは腎間質線維化が抑制されたが、被験マウスの約7割が死亡した。CDOO-im腹腔内投与(ip)はマウスの生存率を下げずにSirius red染色で評価した間質線維化領域を減少し、Nrf2下流遺伝子であるNqo1・Gtsm1の発現を亢進し、線維化マーカーのmRNA発現を抑制した。次にMicroarrayを用いて間質線維化に関与する因子を検索したが、CDDO-Me投与群と非投与群において発現に有意差がみられた因子は同定できなかった。 次に尿細管特異的Nrf2欠損(Nrf2f/f; Pax-8cre/-)および血管内皮特異的Nrf2欠損(Nrf2f/f; Tie2cre/-)を用いてUUOモデルを作製し、腎間質線維化への影響を解析した。Nrf2f/f; Pax-8cre/-はWTと比較しUUOモデルにおいて正常尿細管面積を減少したが、Sirius Red染色で評価した間質線維化領域や線維化mRNAマーカーの発現上昇は見られなかった。Nrf2f/f; Tie2cre/-は尿細管や間質線維化の程度に影響を及ぼさなかった。 次にNrf2f/f; Pax-8cre/-およびNrf2f/f; Tie2cre/-マウスにアデニン腎症モデルを作製し、腎間質線維化への影響を解析した。アデニン食餌day 21においてNrf2f/fと比較しNrf2f/f; Pax8cre/+群で正常尿細管の面積が減少し、間質線維化の面積と線維化mRNAマーカーが増加した。Nrf2f/f; Tie2cre/+群では変化がみられなかった。以上より、腎間質線維化において尿細管Nrf2が重要な役割を担う可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血管内皮特異的Nrf2欠損マウスの繁殖が進まない時期があり、実験に必要なマウスを確保するのに時間がかかっていることから、実験に遅れが生じている。また、血管内皮特異的ノックアウトマウスから初代腎血管内皮細胞を採取し、血管内皮で発現するNrf2の蛋白レベルでの欠損を確認したいと考えているが、マウス腎臓から初代血管内皮細胞を十分量採取することができておらず、初代腎血管内皮細胞の採取方法の安定した実験方法の確立に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
尿細管・血管内皮特異的Nrf2欠損マウスに作製した腎間質線維化モデルにおいて、未解析サンプルの組織染色や間質線維化因子の評価をRT-PCR, Western Blottingなどを用いて行う予定である。 これまでの実験結果からは、UUOモデルでは腎間質線維化の有意な増強はみられず、アデニン腎症では腎間質線維化の増強が見られ、UUO・アデニン腎症モデルともに正常尿細管面積の減少や腎臓重量の減少がみられたことから、尿細管Nrf2欠損に伴い尿細管の細胞死が増強し、尿細管障害が増強するのではないかとの仮説を立てている。そのため、アポトーシスやオートファジー、フェロトーシスなどの細胞死に関連した因子を中心に、RT-PCR, Western Blottingや免疫染色を用いて詳細な評価を進める。 尿細管特異的Nrf2欠損マウスにおけるアデニン腎症モデルの腎組織Microarrayの解析も進め、腎間質線維化に関与する責任因子の同定を進めていく。 さらに、マウス初代腎血管内皮細胞の採取方法を確立するため、gentle MACS dissociatior (Miltenyi Biotec)を新たに購入し、腎細胞を効率的に分散する方法を模索する。最終的に血管内皮特異的Nrf2欠損マウスにおける血管内皮Nrf2の蛋白レベルでの発現減少を確認する。
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