研究課題/領域番号 |
22K16291
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53050:皮膚科学関連
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
長谷川 英哲 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (80935669)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | ASK1 / 乾癬 / イミキモド / AhR |
研究開始時の研究の概要 |
乾癬は、Th17細胞依存性の慢性炎症性角化症で、近年、p38 MAPキナーゼの阻害が乾癬発症を抑制することが報告されたが、その上流のストレス応答MAPキナーゼASK1の関与は不明である。当研究室では、以前に、p38の関与とは反対に、ASK1はむしろ乾癬発症を抑制し、最近、さらに、予備的実験より、ASK1が角化細胞の分化にも重要な芳香族炭化水素受容体(AhR)と会合し、ASK1欠損CD4+T細胞のTh17/22分化誘導系や角化細胞株へのASK1遺伝子導入により、AhR発現を阻害する可能性を見出した。そこで、本研究では、ASK1による乾癬発症の抑制効果とその作用機序を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、Apoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)と芳香族炭化水素受容体(AhR)発現の相関性とTh17/Th22分化について検討した。 ① イミキモド(IMQ)誘導性乾癬のASK1欠損マウスの感受性と野生型でのASK1とAhR発現:5%IMQ含有ベセルナクリームを毎日塗布すると、野生型マウスに比べASK1欠損マウスで乾癬症状が増悪化するが、4日後の野生型およびASK1欠損マウスの皮膚を抗ASK1抗体を用いて免疫組織学的解析を行った。しかし、ASK1の染まりが悪く有棘層かもはっきりしなかった。そこで、次に、その皮膚組織の溶解液をウエスタンブロット解析を行うと、ASK1欠損皮膚では、ASK1とロリクリン発現が低下し、AhR発現が増強されていた。ところが、AhRの下流のシグナルであるシトクロムP450(CYP)1A1とNF-E2 p45-related factor 2 (Nrf2)の発現は、共に減少していた。CYP1A1が増強していれば、乾癬症状増悪化と一致したのだが、その意味はさらに検討中である。 ② 野生型およびASK1欠損マウスでのTh17/Th22分化:上記の乾癬を誘導した皮膚のRNAを抽出しRT-qPCR解析を行うと、IL-22やIL-17発現の増強が見られた。そこで、野生型およびASK1欠損マウス由来ナイーブCD4+T細胞を、AhRのリガンドFICZ有無の各種Th22およびTh17分化条件下で固相化抗CD3抗体+抗CD28抗体で刺激すると、ASK1欠損していると、特にFICZ有でのTh22分化条件下でIL-22産生が増加していることが、FACSを用いた細胞内サイトカイン染色解析と培養上清のELISA解析により示された。この時、ウエスタンブロット解析より、ASK1欠損細胞では、AhR発現が高かった。 以上より、ASK1欠損していると、T細胞でのAhR発現が増強されIL-22産生が増加し、角化細胞の増殖が促進され乾癬が増悪化する可能性が示された。ASK1欠損角化細胞でのAhR発現亢進の意味についてはさらに検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Apoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)と芳香族炭化水素受容体(AhR)発現の相関性が明らかになってきたので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度:ASK1 は角化細胞でもAhR発現を抑制するかの検討 ① ASK1欠損マウスでの表皮角化細胞の分化と増殖:野生型およびASK1欠損マウスの尻尾の皮膚を剥がし角化細胞を調製し、Ca2+で刺激し細胞増殖への影響と、ウエスタンブロット解析によりASK1とAhR発現、角化細胞の分化マーカーの発現を解析する。② マウス角化細胞株PAM212での分化と増殖: CRISPR/Cas9でASK1発現を欠失したPAM212細胞を作製し、野生型PAM212細胞と共に、Ca2+で分化誘導し培養し、増殖とASK1とAhR、各種分化マーカーの発現を調べる。蛋白質合成やプロテオソーム、リソソーム阻害剤存在下で検討し、AhR発現の低下の作用機序を検討する。③ 内在性AhR発現への効果: PAM212に、野生型ASK-HAおよび恒常的活性型ASK-ΔN-HA、および、ドミナントネガティブ型ASK1-KR-HA発現ベクターを遺伝子導入後、ウエスタンブロットを行い、ASK1の内在性AhR発現と、上述の角化細胞の分化マーカー発現への効果を調べる。 2024年度: ASK1による角化細胞分化誘導とAhRへの会合の検討 ① ASK1による角化細胞分化誘導におけるAhRの役割:CRISPR/Cas9でAhR発現を欠失したPAM212細胞を作製し、Ca2+刺激やASK1発現ベクターの遺伝子導入による角化細胞の分化への影響を内在性AhR発現の有無で調べる。② 再構成系でのASK1とAhRの会合:野生型および欠失型ASK1-HAとAhR-3xFLAG発現ベクターをHEK293T細胞に遺伝子導入し、タグに対する抗体で免疫沈降後ウエスタンブロットにより、両者の会合およびその部位を調べる。③ ASK1とAhRの会合: PAM212に、各種ASK1発現ベクターを遺伝子導入後、細胞溶解液を免疫沈降反応後AhRの抗体でウエスタンブロットを行い、内在性AhRが会合するか、その会合部位も検討する。次に、Ca2+で分化誘導したPAM212を用い、内在性のそれぞれの分子が会合するか検討する。
|