研究課題
若手研究
成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)は予後不良の疾患であり、同種移植により治癒が期待できる。一方、mogamulizumab(Mog)は治療抵抗性ATLにおいて有効な治療薬であるが、移植前のMog投与は重症移植片対宿主病(GVHD)の危険性を増加させる。しかし、症例によっては移植前後のMog投与により移植成績を改善する可能性がある。本研究ではATL患者検体を収集し、Mog血中濃度やMog投与前後でのATL細胞やGVHDに関連する因子の推移、遺伝子変異解析によるMog投与に対する反応性と関連する因子を評価する。最終的に同種移植前後の患者において安全で有効なMog投与を可能にすることを目的とする。
成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に対する有効な新規薬剤であるmogamulizumab(Mog)は、同種造血細胞移植(移植)前にMog投与することは重症移植片対宿主病(GVHD)および移植関連死亡の危険性を増加させるが、そのメカニズムははっきり分かっていない。また移植前と違い移植後再発に対してはMogを比較的安全に投与でき、一部の症例においては有効であるが、どのような症例において有効であるかは分かっていない。そこで本研究ではATL患者検体を収集し、Mog血中濃度とATL細胞やHTLV-1感染細胞、制御性T細胞(Treg)に注目し、移植前後の患者において安全で有効なMog投与を可能にすることを目的とする。本年度はこれまで得られた知見を再評価するとともに、新規の検体集積に取り組んだ。これまで得られた知見では、Mog血中濃度が移植前:679ng/ml、移植18日後:190 ng/mlで、さらに移植前・移植18日後にごく少数例ではあるがTregが同定できる症例では、重篤なGVHDを発症することなく経過しており、移植前および移植直後の低いMog血中レベルとごく少数でもTregを同定できることが重要だと考えられる。同種移植後のMog投与については以前6症例での結果を発表したが現在引き続き症例集積中であり、末梢血病変に有効であること、リンパ節病変には有効性が劣るものの局所病変には他の治療と併用することで効果が得られることが確認できた。今後は更に症例および検体集積を続けるとともに、フローサイトメトリーおよびマスサイトメトリーによる解析を行っていく予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Bone Marrow Transplant.
巻: 58 号: 9 ページ: 980-990
10.1038/s41409-023-02002-7