研究課題/領域番号 |
22K16315
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
前川 隆彰 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 緩和ケア室, 講師 (70907055)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 患者血清 / MDS92 / fibrocyte / Polgマウス / genotyping / ホモ接合体 / FISH法 / 骨髄線維症 / 骨髄異形成症候群 / サイトカイン / SLAMF7 |
研究開始時の研究の概要 |
血液疾患において骨髄線維化の合併は予後不良の要因であるが、具体的な線維化誘導機序は未だ不明な点が多く、その対処法も確立していない。申請者はfibrocyteという創傷治癒に関与するとされてきた単球由来の細胞に着目し、この細胞が骨髄増殖性腫瘍における骨髄線維化の進展に寄与していることを明らかにしてきた。本研究では、骨髄異形成症候群(MDS)におけるfibrocyteによる骨髄線維化誘導機序の関与を明らかにするため、MDSの腫瘍細胞が fibrocyteの分化経路や機能に与える影響、さらには腫瘍細胞自体がfibrocyteに分化して骨髄線維化を促進している可能性について検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では①「MDSの腫瘍細胞が産生するサイトカインがfibrocyteの分化経路に及ぼす作用」、②「MDS症例の末梢血検体及びMDSモデルマウスにおけるfibrocyteの活性化の有無」及び③「腫瘍細胞自体がfibrocyteへと分化して骨髄線維化に寄与している可能性」について検討を加える。 ①に関して、MDS患者9例およびMDSから進行したAML患者3例の血清検体を保存した。さらに、MDS患者の幹細胞から樹立されたMDS92細胞株を譲渡して頂き、本細胞株を培養し継代すると共に、その培養上清約200mlの保存を行った。今後この培養上清を用いて健常者の単球の培養実験を行い、通常の培地と比較してfibrocyteへの分化が促進されるか否かを検証する方針である。 ②に関しては、血清同様に文書で同意の得られたMDS患者9例およびMDSから進行したAML患者3例の血球検体を保存した。また、MDSのモデルマウスであるPolgマウスのヘテロ接合体を2ペア4匹購入した。Jackson Laboratoryの公表しているPolgマウスの遺伝子変異の挿入を確認するためのプライマーを用いてgenotypingを行い、4匹ともヘテロ接合体となっていることを確認した。出生したマウスについても同様のgenotypingを行い、その結果に基づき研究に必要な数のホモ接合体マウスを得られるよう交配を継続している。交配は順調に進んでおり、今後Romiplostimの投与実験を行うために、ホモ接合体のメスを投与群5匹、非投与群5匹の計10匹準備することを計画している。 ③については、FISH法にて検出可能なMDS症例が2, 3例必要であり、その頻度を考慮すると令和6年3月までに十分な症例数を集積することができるかは不透明であり、研究期間の延長が必要となる可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Jackson LaboratoryよりMDSのモデルマウスであるPolgマウスのヘテロ接合体を2ペア4匹購入することを計画したが、新型コロナウイルスの影響に伴う発送の遅れなどが相次ぎ、実際に納品されたのは令和4年12月15日となった。納品後の交配については比較的順調に進んでいるが、開始時期が半年以上遅延しているため、今後研究期間の延長が必要となる可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では①「MDSの腫瘍細胞が産生するサイトカインがfibrocyteの分化経路に及ぼす作用」、②「MDS症例の末梢血検体及びMDSモデルマウスにおけるfibrocyteの活性化の有無」及び③「腫瘍細胞自体がfibrocyteへと分化して骨髄線維化に寄与している可能性」について検討を加える。 ①については、十分な患者検体数(30症例を目標としている)が集まった時点で、fibrocyteの分化に関わるサイトカインの評価を行う予定である。単球からfibrocyteへの分化を促進するサイトカインとしては、M-CSF・IL-4・IL-13に加えて申請者が見出したTPOなどが知られている。逆に、血清中にはSAPなどのfibrocyteの分化を抑制するサイトカインが含まれ、分化を制御している。これまでの研究で、MPN症例を対象に上記を含む24種類の血清サイトカイン濃度をmulti-cytokine assayで解析したことから、本研究でもMDS症例に対して同様の解析を実施する方針としている。 ②については、同時期に出生したホモ接合体マウスのメスを投与群5匹、非投与群5匹の計10匹準備し、Romiplostimの投与に伴う骨髄線維化や脾腫、貧血の進行などについて評価する。また、可能であればホモ接合体マウス5匹と同週齢の野生型マウス5匹の両群に対してRomiplostimの投与を行い、反応性の差異について評価する。 ③については、現在FISH法によって腫瘍細胞由来のfibrocyteとそれ以外のfibrocyteを判別することを計画しているが、十分な数のFISHによって判別可能な染色体異常を持つMDS症例が得られなかった場合、免疫染色など他の方法で腫瘍と非腫瘍を判別する手段を検討しなくてはならなくなる可能性もある。引き続き症例を集積しつつ検討していく。
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