研究課題/領域番号 |
22K16324
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
齋藤 清香 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特定事業研究員 (50936747)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 造血幹細胞 / 赤血球分化 / 貧血ストレス / 脂質代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者がこれまでに行った重度貧血モデルマウスを用いた研究により、より未分化な造血幹細胞において、既知の赤血球分化制御因子の関与が認められないにもかかわらず、赤血球への分化能が増加することが明らかとなった。この造血幹細胞での赤血球分化促進には、 脂質の一種であるVery Low Density Lipoproteinの構成タンパク質の一つである Apolipoprotein E (ApoE)が作用していることを見出した。そこで、本研究では、ApoE及び脂質代謝による造血幹細胞の赤血球分化に関する分子機構を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
多くの成体造血幹細胞は骨髄内で静止期に置かれているが、様々な造血ストレスに応答するために増殖を亢進し、かつ特定の血液細胞に偏った造血を行うことが明らかとなっている。赤血球は毎日約2000億個が新たに産生されており、体全体の80%を占める細胞であるが、急性貧血ストレスに対する造血幹細胞応答は明らかになっていない。赤血球造血に寄与する因子として、造血前駆細胞におけるGata1遺伝子の発現や、巨核球・赤芽球前駆細胞に対するエリスロポエチン (EPO)の作用などが広く知られている。しかし、申請者がこれまでに行った重度貧血モデルマウスを用いた研究により、より未分化な造血幹細胞において、既知の赤血球分化制御因子の関与が認められないにもかかわらず、赤血球への分化能が増加することが明らかとなった。この造血幹細胞での赤血球分化促進には、脂質の一種であるVery Low Density Lipoprotein (VLDL)の構成タンパク質の一つであるApolipoprotein E (ApoE)により制御されていることが認められた。しかし、ApoEがどのように造血幹細胞の赤血球造血を制御しているのかについて、詳しい分子機構は不明のままである。また、貧血誘導した造血幹細胞の1細胞RNAシークエンス解析の結果から、定常状態の造血幹細胞と比較して貧血誘導時の造血幹細胞にのみ出現するクラスターには、Gata1やEPO受容体などの赤血球分化に寄与する遺伝子群の発現増強は認められなかった。この事実からVLDLR陽性細胞では赤血球分化に関する遺伝子の発現は未だONになっていないものの、クロマチンのアクセシビリティに違いがあり、分化し易くなっていると仮説立てた。これを証明するために、ATACシークエンス法を用いて貧血誘導された造血幹細胞のクロマチンアクセシビリティの差異を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATACシークエンスの結果、貧血誘導した造血幹細胞の中でも特にVLDLRの発現が高い細胞のクロマチンアクセシビリティがVLDLRの発現が低い細胞に比べて低いことが明らかとなった。さらに、モチーフ解析の結果、VLDLRの発現が高い造血幹細胞では幹細胞性と巨核球分化能の維持に必要なErg遺伝子の結合配列を含む領域のアクセシビリティが相対的に低下していることが分かった。また、in vitroでのApoE添加によってこれらの領域のアクセシビリティはさらに低下していた。Erg遺伝子の発現自体は貧血誘導によって変化しておらず、急性貧血誘導時は造血幹細胞に存在するErgの標的領域への結合が一時的に低下することで巨核球造血が減少し、相対的に赤血球分化が亢進している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ApoEを起点とした脂質代謝による新しい赤血球分化の制御機構を見出したが、貧血誘導によって増加したApoEは内因性または外因性のどちら由来のApoEであるのかについて、ApoEノックアウトマウスと骨髄移植実験を用いた研究により明らかにする。また、VLDLRの発現が高い造血幹細胞でより赤血球分化の亢進が認められたことから、shRNAを用いてVLDLRをノックダウンさせた造血幹細胞のin vivoでの機能を解析する。
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