研究課題/領域番号 |
22K16357
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
佐々木 広和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30822639)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 特発性炎症性筋疾患 / PD-1 / T細胞 / 免疫疲弊分子 |
研究開始時の研究の概要 |
特発性炎症性筋疾患(idiopathic inflammatory myopathies, IIM)は骨格筋を病変の主座とする原因不明の全身性炎症性疾患である。IIM患者のT細胞における免疫疲弊分子、エフェクター分子を評価することでIIMにおける細胞疲弊メカニズムの理解、筋傷害に関与する免疫担当細胞サブセットの同定、さらには新規治療標的の開発につながると期待できる。本研究ではIIM患者の末梢血、筋組織由来細胞のT細胞疲弊分子およびエフェクター分子の発現を同時に解析する。さらに筋炎マウスモデルを用いて、免疫疲弊分子、エフェクター分子に着目した免疫表現型の動的な変化を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
特発性炎症性筋疾患(IIM)患者の末梢血の解析で、活動期には非活動期と比較して、PD-1+CD8+T細胞はパーフォリンやグランザイムBといった細胞溶解分子を高発現していることがわかった。一方でPD-1-CD8+T細胞では細胞溶解分子の発現率は活動期と非活動期の間に差を認めなかった。また、活動期のPD-1+CD8+T細胞のごく一部でのみTOXを高発現し、TOX高発現細胞では、細胞溶解分子の発現率が低下していた。しかし、大部分のPD-1+CD8+T細胞では活性化した状態を維持していました。IIM患者の免疫表現型の解析から、PD-1+CD8+T細胞は慢性的な自己抗原による刺激下でも、疲弊することなく、活性化していることが明らかとなった。 また、マウスの筋炎モデルを用いて、PD-1+CD8+T細胞の病原性も検証したところ、マウス筋炎では、PD-1-CD8+T細胞と比較して、PD-1+CD8+T細胞が細胞溶解分子を高発現していた。特に傷害された筋組織において、PD-1+CD8+T細胞の集積が顕著だった。PD-1のリガンドであるPD-L1の欠損により、筋炎の重症化が見られた。PD-L1ノックアウトマウスの筋組織では、野生型マウスと比較して、PD-1+CD8+T細胞の増加が見られた。これらの結果から、筋炎において、PD-1+CD8+T細胞は筋傷害に関与する病的なサブセットであることがわかった。 一方、筋炎の標的臓器である筋において、ノックアウトマウスを用いた検討により、IFNγがPD-L1の主要な誘導因子であることを明らかにした。また、筋におけるPD-L1の発現制御にはCDK5という分子を介していることを明らかにした。また、in vitroの筋傷害モデルを用いて、IFNγによってPD-L1が高発現した筋線維はCD8+T細胞の攻撃を減弱させることを明らかにした。以上から、IIMにおいて、筋線維は危険信号としてIFNγに反応し、PD-L1発現を介してPD-1+CD8+T細胞に反撃していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたヒト検体の解析とマウスモデルの解析を概ね完了し、成果を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果はIIMにおけるPD-1+T細胞を標的にした新規治療法の可能性に関する新たな知見となる。また、これまでIIMを含む自己免疫疾患におけるT細胞の疲弊メカニズムは十分にわかっていなかったが、この研究から、IIMにおいてT細胞が疲弊を回避するメカニズムが存在することが示唆される。 今後は、IIMにおけるPD-1+T細胞の免疫疲弊回避メカニズムの探究を検討する。今後の研究は、IIMのみならず、慢性的に自己の抗原により免疫細胞が刺激されていると考えられる多くの自己免疫疾患の病態の理解に重要な知見となると考えられる。
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