研究課題/領域番号 |
22K16385
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
鎌田 啓佑 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 臨床・疫学部, 医員 (80885666)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | M. abscesses / 気道上皮細胞 / 好中球エラスターゼ / 接着 / 非結核性抗酸菌 / Mycobacterium abscessus |
研究開始時の研究の概要 |
非結核性抗酸菌の1つであるMycobacterium abscessus subsp. abscessus (MAB)による下気道感染症は近年増加している慢性難治性の下気道感染症である。しかしin vitroでのヒト気道感染モデルでは容易に感染が成立せず、感染成立機序は現在も不明である。本研究ではAir-Liquid-Interface (ALI)培養で作成したin vitroヒト上皮気道モデルを用いて、繊毛上皮機能の阻害や、近年、気道上皮における微生物取り込みへの関与が示唆されている呼吸器 microfold cell (M細胞)がMABの感染性に影響を与える可能性について検証する。
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研究実績の概要 |
ヒト気道上皮初代細胞を4系統(健常人: 近位気道、遠位気道, COPD患者: 近位気道、遠位気道)用意し、気相液相界面(air liquid interface: ALI)培養による気道上皮モデル構築を行なった。培養液としてPneumacult ALI(STEMCELL), 遠位気道モデル構築はPneumacult ALI-S(STEMCELL)をそれぞれ使用した。健常人近位気道および、COPD患者遠位気道上皮細胞の2系統については適切な細胞増殖および分化が確認された。しかし残りの2系統(健常人:遠位気道, COPD患者:近位気道)に関しては細胞増殖の速度が遅く、培養条件や培地を検討したが適切な分化は確認できなかった。感染実験に用いるためのM. abscessus. subsp abscessus のtype strain (ATCC19977)に対して形質転換を行いGFP発現プラスミドを導入した。ここまで実験を行なった段階でALI培養を行う上で必要となる培養インサートが品薄となり入手困難となってしまったため上記初代細胞を用いたALI培養は中断せざるを得なかった。代替手段としてiPS由来気道上皮細胞モデル(HiLung)を用いて感染実験を行なった。培養インサート頂端側を好中球エラスターゼ100μl (濃度10μg/ml, 50μg/ml)で8時間処理したのちにM. abscessus subsp abscessus のType strainおよび臨床分離株から調製した菌液を頂端側に感染させ6時間後に十分洗浄し接着菌数を計測した。いずれの菌株においてもコントロール(PBS)と比較し好中球エラスターゼ処理群では接着菌数が多く、好中球エラスターゼ10mμg/mlと50μg/mlの比較では50μg/mlの方が接着菌数が多い傾向が示された。Type strainに関しては免疫染色で接着細菌の分布を観察したところ非繊毛上皮細胞に接着する傾向が観察されたが気道上皮細胞へ直接侵入する菌体は観察できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
準備した4系統の初代細胞のうち2系統(健常人:遠位気道, COPD患者:近位気道)に関しては推奨されるプロトコルによってALI培養を試みたものの細胞増殖の速度が遅く、培養条件や培地を検討したが適切な分化が確認できなかった。またALI培養を行う上で必要となる培養インサートが品薄となり入手困難となってしまったため上記初代細胞を用いたALI培養は中断せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
分化が不十分であった2系統の初代細胞(健常人:遠位気道, COPD患者:近位気道)についてはマウス線維芽細胞3T3J2をfeeder細胞としたConditionally reprogrammed cells (CRC)法による培養で増殖、分化に改善がないかどうかを確認する。当初、M細胞誘導発現によるM細胞への直接的なM. abscessusの侵入の可能性を考えていたが、手術切除検体におけるM細胞発現有無の評価に関しては診断のために確保する必要な検体量の問題から、関係科との調整が保留となっている。また上述の通り、当初の想定よりも気道上皮モデル構築にコストを要しており、M細胞発現誘導のために必要なタンパク質であるRANKL合成が困難となる可能性がある。その場合には研究計画を変更し、各種ストレス下での感染実験における菌の接着部位と上皮細胞への侵入菌を評価した後に、気道上皮感染モデルにおける頂端側の代謝物(アミノ酸、有機酸、短鎖脂肪酸)を液体クロマトグラム質量分析計で経時的に評価し、感染における代謝物変化と菌株間での差異を評価する方針とする。
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