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膵β細胞内脂肪酸代謝を切り口としたDOHaD学説の検証と糖尿病再生医療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K16395
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分54040:代謝および内分泌学関連
研究機関大阪大学

研究代表者

佐々木 周伍  大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60908185)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード膵β細胞 / iPS細胞 / 脂肪酸代謝 / 糖尿病 / DOHaD
研究開始時の研究の概要

糖尿病の有望な新規治療法に、失われた膵β細胞そのものを補充する細胞治療がある。その実現にはβ細胞発生学の知見が手掛かりとなる。妊娠期の母体栄養環境が子の成人期糖尿病発症に関わることが知られているが(DOHaD学説)、β細胞発生過程ですでに起きている変化は検討されていない。私は以前分化早期β細胞が意外にも脂肪酸代謝関連遺伝子を高発現していることを見出した。本研究ではヒトiPS細胞を用いてβ細胞発生を再現し、ヒトβ細胞成熟に伴う細胞内脂肪酸代謝変化を解明し、子宮内栄養環境悪化が子のβ細胞発生に与える影響を検討する。さらに明らかとなった代謝物変化に介入することによりβ細胞分化誘導法の効率化を目指す。

研究実績の概要

マウスの胎生後期β細胞のシングルセル・トランスクリプトーム解析によって、分化早期β細胞がMlxiplをはじめとした脂肪酸合成関連遺伝子を高発現している時期があることを見出した。MlxiplはChREBPをコードする遺伝子であり、ChREBPは解糖系・脂質生合成系酵素遺伝子の発現を誘導する。このことから、β細胞分化が進むにつれ、ChREBPの発現上昇を中心とした脂質合成経路が活性化することが示唆された。
次に、ヒト細胞でのβ細胞分化・成熟過程における脂質代謝変化についてヒトiPS細胞を用いて検討した。ヒトiPS細胞由来β細胞においてもMLXIPLをはじめとした脂質合成関連遺伝子および脂肪滴形成遺伝子PLIN2の発現増加、さらに脂肪滴増加が観察された。以上から、マウスのみならずヒト細胞でも同様にβ細胞分化・成熟過程における脂質合成の重要性が明らかとなった。
ChREBPの働きを制御する因子の一つとしてPPARαが知られている。実際に、われわれのヒトiPS細胞由来β細胞分化の過程においても、β酸化関連遺伝子であるPPARαがMLXIPLに先駆けて発現し、その後β細胞の分化が進むにつれ、両者が入れ替わるようにPPARαは低下傾向、MLXIPLは著明な上昇を呈していた。そこで、PPARα作用の阻害を介したChREBP発現上昇を期待して、ヒトiPS細胞由来β細胞分化誘導プロトコールのうち、膵内分泌細胞分化ステップである分化15-22日にPPARαアンタゴニストGW6471を投与した。その結果、GW6471投与によりインスリン遺伝子の発現上昇、β細胞特異的な転写因子NKX6.1の発現上昇傾向およびMLXIPL, ACLY, SREBPF1等脂質合成関連遺伝子の発現上昇またはその傾向がみられた。以上より、PPARα作用の阻害によってiPS細胞由来β細胞分化誘導が高効率化する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

安定的なヒトiPS細胞から膵β様細胞への分化誘導法を確立し、胎児の病態モデルとして、またβ細胞分化誘導効率の改善を目指すモデルとして使用している。まず、計画通り、マウスシングルセル解析データおよびヒトiPS細胞を用いた検討によって、マウスおよびヒト両者の膵β様細胞発生・成熟における脂肪酸代謝の重要性を示すことができた。次に、ヒトiPS由来膵β様細胞における定量的PCR、FACSや免疫染色のデータはすでに得られており、順調に進んでいる。さらに、妊娠糖尿病の胎児への影響を培養皿上での再現するため、炎症性サイトカイン、糖、脂質等を用いた実験を行った。その結果、培養液中の高糖濃度に比較し、炎症性サイトカイン添加が既報の妊娠糖尿病状態での胎仔β細胞の表現型により類似していることが明らかとなった。現在、ヒトiPS細胞由来β細胞分化誘導効率の改善を目指し、PPARα作用を代表にさまざまな小分子などを用いた脂質代謝経路への介入を行っている。

今後の研究の推進方策

ヒト膵β細胞発生・成熟過程における脂肪酸代謝動態を解明するため、最終代謝物を直接定量可能なリピドーム解析を行う。まず、野生型iPS細を用いて、in vitro 3次元培養でβ細胞まで分化誘導後、β細胞新生から成熟までの発生学的に段階的なサンプルを得る。各分化段階の細胞内容を抽出し、SFC-MSを使用してリピドーム解析を行い、細胞内脂質代謝物の経時的変化を明らかにする。以上により、将来の糖尿病細胞治療に向けた知識基盤を構築する。さらに、PPARαをはじめとした脂質代謝に重要な遺伝子をノックダウンさせた場合の脂質プロファイルや脂質代謝関連遺伝子の変化を解析し、これら脂質代謝関連因子のβ細胞分化・成熟における重要性を明らかにする。
脂肪酸代謝介入によるヒトiPS細胞からの膵β細胞分化誘導法の効率化を目指す。様々な分化誘導のタイミングでPPARαに作用する小分子を直接添加し、β細胞誘導効率を定量する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)

  • [雑誌論文] Heterogeneity of Islet Cells during Embryogenesis and Differentiation2023

    • 著者名/発表者名
      Sasaki S, Miyatsuka T
    • 雑誌名

      Diabetes Metab J

      巻: 47 号: 2 ページ: 173-184

    • DOI

      10.4093/dmj.2022.0324

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Newly discovered knowledge pertaining to glucagon and its clinical applications2023

    • 著者名/発表者名
      Kawamori D, Sasaki S
    • 雑誌名

      J Diabetes Investig

      巻: Online ahead of print 号: 7 ページ: 829-837

    • DOI

      10.1111/jdi.14009

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Spatial and transcriptional heterogeneity of pancreatic beta cell neogenesis revealed by a time-resolved reporter system2022

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Shugo、Lee Michelle Y. Y.、Wakabayashi Yuka、Suzuki Luka、Winata Helena、Himuro Miwa、Matsuoka Taka-aki、Shimomura Iichiro、Watada Hirotaka、Lynn Francis C.、Miyatsuka Takeshi
    • 雑誌名

      Diabetologia

      巻: 65 号: 5 ページ: 811-828

    • DOI

      10.1007/s00125-022-05662-0

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ダイレクトリプログラミングによるβ細胞分化誘導2024

    • 著者名/発表者名
      佐々木周伍
    • 学会等名
      第58回糖尿病学の進歩
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 糖尿病再生医療応用に向けたヒト膵 β 細胞成熟過程における脂肪酸代謝の重要性の解明2023

    • 著者名/発表者名
      今田 侑, 佐々木周伍, 奥野陽亮, 河盛 段, 片上直人, 下村伊一郎
    • 学会等名
      第66回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 糖尿病再生医療応用に向けたヒト膵 β 細胞成熟過程における脂肪酸代謝の重要性の解明2023

    • 著者名/発表者名
      今田 侑, 佐々木周伍, 奥野陽亮, 河盛 段, 片上直人, 下村伊一郎
    • 学会等名
      第96回日本内分泌学会学術総会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] イメグリミンはメトホルミンと異なる作用機序によってβ細胞の分化・成熟を促進する2023

    • 著者名/発表者名
      今田侑,佐々木周伍,山口大旗,河盛段,片上直人,下村伊一郎
    • 学会等名
      第34回分子糖尿病学シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] リアルタイム・シングルセルトランスクリプトーム解析が明らかにしたβ細胞新生の特徴と再生医療への応用2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木周伍
    • 学会等名
      第65回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] リアルタイム・シングルセルトランスクリプトーム解析が明らかにした新生β細胞の特徴とニッチ2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木周伍
    • 学会等名
      第65回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] リアルタイム・シングルセルトランスクリプトーム解析が明らかにした新生β細胞の特徴とニッチ2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木周伍
    • 学会等名
      シングルセルゲノミクス研究会2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Spatial and transcriptional heterogeneity of pancreatic β-cell neogenesis revealed by a time-resolved reporter system2022

    • 著者名/発表者名
      Shugo Sasaki
    • 学会等名
      2022 International Congress of Diabetes and Metabolism, Korea
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] リアルタイム・シングルセルトランスクリプトーム解析が明らかにした新生β細胞の特徴とニッチ2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木周伍
    • 学会等名
      第21回日本先進糖尿病治療・1型糖尿病研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] リアルタイム・シングルセルトランスクリプトーム解析が明らかにした新生β細胞の特徴とニッチ2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木周伍
    • 学会等名
      NGS EXPO 2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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