研究課題
若手研究
自己免疫性下垂体炎には腫瘍随伴症候群として発症する一群があることを見出し、その発症に特異的キラーT細胞が関与することを明らかにしてきた。しかし、患者固有のHLAを持つヒト下垂体を疾患モデルとして再現できないことから、病態についての十分な解析はなされておらず、さらに液性免疫としての補体依存性あるいは抗体依存性の細胞傷害活性の病態への関与も明らかではない。自己免疫性下垂体炎の患者由来iPS細胞を用いたin vitro疾患モデルを構築し、細胞性免疫および液性免疫の病態への関与を明らかにすることを通じて、腫瘍随伴症候群としての自己免疫性下垂体炎の病態解明とともに新規治療のシーズ探索を目指す。
自己免疫性下垂体炎には腫瘍随伴症候群として発症する一群があることを見出し、その発症に特異的キラーT細胞が関与することを明らかにしてきた。しかし、患者固有のHLAを持つヒト下垂体を疾患モデルとして再現できないことから、病態についての十分な解析はなされておらず、さらに液性免疫としての補体依存性あるいは抗体依存性の細胞傷害活性の病態への関与も明らかではない。自己免疫性下垂体炎の患者由来iPS細胞を用いたin vitro疾患モデルを構築し、細胞性免疫および液性免疫の病態への関与を明らかにすることを通じて、腫瘍随伴症候群としての自己免疫性下垂体炎の病態解明とともに新規治療のシーズ探索を目指す。本研究は、①患者iPS細胞から下垂体の作成、②患者由来PIT-1特異的キラーT細胞の単離および患者由来下垂体との共培養を用いたin vitroモデル作成、③下垂体と患者血清、末梢血単核球細胞(PBMC)を用いたCDC活性、ADCC活性の評価、④in vitroモデルにおける細胞傷害の抑制因子の探索、⑤胸腺腫データベースを用いた解析の5ステップで実施する。①iPS細胞からの下垂体分化誘導手法を用いて、患者および健常人のiPS細胞由来下垂体(iPSC下垂体)を作成した。また、抗原タンパクであるPIT-1の制御下にGFPレポーターを発現するiPS細胞を用いて標的細胞の収集効率を高めた。②患者PBMCに対し、全長PIT-1タンパクをカバーする10アミノ酸ごとのペプチドを作成し、個別に添加して活性化するキラーT細胞を分取した。特異的ペプチドを同定し、特異的T細胞の活性化(CD137発現)、細胞傷害性(CD107a発現)を確認した。また、これら下垂体細胞とキラーT細胞を共培養したin vitroモデルの条件最適化を行った。
2: おおむね順調に進展している
①患者iPS細胞から下垂体の作成:ヒトiPS細胞からの下垂体分化手法を用いて、患者iPS細胞由来下垂体(iPSC下垂体)を作成した。健常対照として201B7株、HC06株等の複数株を用いた。それぞれにおいて標的細胞となるPIT-1陽性細胞の産生を確立し、ホルモン産生能も確認した。また、PIT-1発現を追跡するためのPIT-1-GFPレポーターiPS細胞も作成が完了した。②患者由来PIT-1特異的キラーT細胞の単離およびiPSC下垂体との共培養を用いたin vitro疾患モデル作成:患者PBMCに対し、全長PIT-1タンパクをカバーする10アミノ酸毎のオーバーラップペプチドを作成し、個別に添加して活性化するキラーT細胞を分取しクローン化することに成功した。そのことによりキラーT細胞の特異的活性化に関連するペプチドおよびT細胞受容体(TCR)を同定し、その特異的T細胞の活性化(CD137発現)、細胞傷害性(CD107a発現)を確認した。③下垂体と患者血清、末梢血単核球細胞(PBMC)を用いたCDC活性、ADCC活性の評価に対する条件検討実験を実施した。以上のように研究計画が順調に進行していると評価できる。
in vitro疾患モデル作成(②の後半):患者iPSC下垂体と抗原特異的キラーT細胞の共培養によるin vitro疾患モデルを用いて、フローサイトメトリー、qRT-PCRによるキラーT細胞の特異的細胞傷害性、免疫染色法によるiPSC下垂体における特異的アポトーシスおよびキラーT細胞浸潤評価を継続する。また、共培養サンプルを用いたRNA-seq解析により本疾患の治療候補の探索を行う。③下垂体と患者血清、PBMCを用いたCDC活性、ADCC活性の評価:iPSC下垂体に対して、患者PBMCおよび患者血清の添加によるADCC活性をフローサイトメトリーによる、PIT-1陽性細胞あたりのアポトーシス細胞率により評価継続する。またiPSC下垂体に対する患者血清の添加によるCDC活性の評価を同アッセイにより反復して行う。
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