研究課題/領域番号 |
22K16399
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
津山 友徳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10845960)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 低酸素 / ミトコンドリア / 転写抑制 / 膵β細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
膵β細胞は低酸素に陥ると細胞の生存やインスリン分泌機能が障害されるため膵β細胞の低酸素応答機構を解明することは糖尿病の病態解明や治療法の開発につながりうる重要な研究課題である。しかしながら、現状では膵β細胞の低酸素応答機構には未解明な点が多い。申請者は網羅的な遺伝子発現解析により膵β細胞における低酸素誘導性因子として、転写抑制因子BHLHE40と水酸化酵素PHD3を新たに見出した。予備検討からBHLHE40やPHD3は膵β細胞の低酸素応答において重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。本研究ではBHLHE40やPHD3の膵β細胞低酸素応答における役割とその分子メカニズムを解明する。
|
研究実績の概要 |
私は膵β細胞における低酸素誘導因子として、転写抑制因子BHLHE40と水酸化酵素PHD3を新たに見出した。そこで本研究では、BHLHE40およびPHD3のβ細胞低酸素応答における役割とその分子メカニズムを解明することを目的としている。 これまでの予備的検討から、BHLHE40はインスリン分泌に必須な転写因子であるMafaの転写を抑制していることが判明していた。その分子メカニズムの解明を進めてきた結果、BHLHE40は転写因子PDX-1がMafaエンハンサー領域に結合し転写を活性化することを阻害していることが判明した。さらにBHLHE40によるMAFA発現抑制によって、インスリン開口放出に関与する遺伝子群の発現が抑制されていることが判明した。 またこれまでの検討から、BHLHE40はミトコンドリアの生合成や酸化的リン酸化に重要なPGC-1αの発現を抑制していることが判明していた。この結果と対応して、BHLHE40が低酸素下においてミトコンドリア量、ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリアタンパク量、細胞内ATP量の減少に関与していることを新たに解明した。 以上の結果から、BHLHE40が低酸素下においてインスリン分泌を抑制している分子メカニズムにはMAFAの発現抑制を介した開口分泌阻害とPGC1-αの発現抑制を介したミトコンドリアにおけるATP産生阻害が関与していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画はBHLHE40とPHD3の2つの低酸素応答因子のβ細胞における役割解明を目的としたものである。BHLHE40研究については① BHLHE40によるMafa転写抑制メカニズムの解明、② Mafa以外のBHLHE40転写抑制標的の同定、および③ その標的因子がβ細胞に及ぼす影響の解明を当初の研究目標としていた。上記項目で示したように、①に関する分子メカニズム(MafaエンハンサーへのPDX-1結合阻害)、②の標的分子(PGC-1α)および③その影響(ミトコンドリアにおけるATP産生阻害など)のいずれについても重要な知見を得ることができた。以上の研究成果を現在論文投稿(リバイス)中であることから、BHLHE40研究については重要な進展が得られたといえる。PHD3研究については現在のところ進展は得られていないため今後の課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度はBHLHE40研究に重点的に取組み本研究計画で期待していた成果が得られたため、今年度はPHD3研究に重点的に取組む予定である。具体的には当初の研究計画書に記載していた内容通り、PHD3が低酸素ストレスから膵β細胞を保護する分子メカニズムを解明するために、①PHD3が水酸化修飾する標的因子を探索し、②その水酸化修飾が膵β細胞保護に果たす役割を解明する。
|