研究課題
若手研究
エネルギー消費機能をもつ熱産生脂肪細胞の活性化が肥満や耐糖能異常を改善しうるとの報告がある。ヒト熱産生脂肪細胞の大部分が、本来熱産生能を持たない白色脂肪組織中に慢性寒冷刺激など環境因子によって誘導されるベージュ脂肪細胞の特徴を持つことから、ベージュ脂肪細胞誘導を制御する分子機構の解明が肥満や糖尿病の病態解明や治療応用に繋がると期待されている。環境変化に適応する際に配列変更を伴わずに遺伝子発現を制御するエピゲノムが、ベージュ脂肪細胞の誘導に関わると考えられるが、詳細は不明である。本研究では、ベージュ脂肪細胞誘導に関わるエピゲノムの解明、その分子機構が与える生体内エネルギー代謝への影響を解明する。
タモキシフェン誘導型脂肪組織特異的標的遺伝子ノックアウトマウスをCre-loxPシステムとタモキシフェン投与によって作製し得た。上記ノックアウトマウスを4℃の急性寒冷曝露刺激実験に供すると対照群と比較し明らかに直腸温は低下し、急性寒冷耐性が低下していることを確認し得た。続いて同マウスを10℃の比較的穏やかな寒冷環境下に暴露し1週間後にsacrifice、肩甲骨間褐色脂肪組織、鼠径部白色脂肪組織を採取した。遺伝子発現解析をqPCRによって実施したところ、対照群と比較し熱産生遺伝子の発現は上記組織において明らかな有意差を認めなかった。Histone acetylationに関して、標的遺伝子をノックダウンしたベージュ脂肪細胞から核を単離し、アセチル化に必要な化合物と共培養した後にヒストンを抽出し、アセチル化リジン抗体によるwestern blottingを実施した。ノックダウン群では対照群と比較しアセチル化低下を確認し得た。現在、再現性を確認中である。さらに、同位元素を用いた実験についても準備を進め、予備実験を実施している。ChIP-seqについては、検体を作製済みで、Runに向けてlibrary調整を実施している。ヒト検体については目下収集中である。
3: やや遅れている
当初の予定に比べ、該当手術件数の減少に伴いヒト検体の収集が遅れている。また、上記の通り緩やかな寒冷刺激条件の設定が難しく、適切な温度設定、暴露期間を現在調整中である。
適切な温度条件を引き続き検証し、in vivoでの解析を進める。ヒト検体については引き続き収集するとともに、publicなRNA-seqデータセット等を活用しヒト脂肪組織における標的遺伝子発現について解析を進める。
すべて 2024 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 4件)
Journal of Visualized Experiments
巻: - 号: 203
10.3791/66085
iScience
巻: 26 号: 7 ページ: 107143-107143
10.1016/j.isci.2023.107143
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 120 号: 31
10.1073/pnas.2308750120
Molecular and Cellular Endocrinology
巻: 548 ページ: 111613-111613
10.1016/j.mce.2022.111613
Endocrine-Related Cancer
巻: 29 号: 8 ページ: 495-502
10.1530/erc-22-0115
巻: 25 号: 8 ページ: 104729-104729
10.1016/j.isci.2022.104729