研究課題/領域番号 |
22K16416
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
緒方 大聖 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30906847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 原発性アルドステロン症 |
研究開始時の研究の概要 |
アルドステロン産生腺腫(APA)はアルドステロンの自律的過剰分泌で定義される副腎腫瘍である。近年アルドステロン以外にコルチゾールの過剰分泌を合併し、臓器障害の進展へ寄与することが明らかとなってきたが、その腫瘍内合成機序は注目されてこなかった。またアルドステロン合成に注目したこれまでの解析ではAPAの発生母地が同定されていない。本研究では、ステロイドミクスを含む統合オミクス解析によってAPA腫瘍内コルチゾール合成機序および代謝特性形成機構を解明し、さらにシングルセルトランスクリプトーム解析を用いた分化経路推定解析を加えてAPA発生母地の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究ではアルドステロン産生腺腫(APA)の腫瘍内コルチゾール合成の証明および機序の解明を目指している。 APA腫瘍検体の解析を行い、APA腫瘍内のコルチゾール含有を液体クロマトグラフィータンデム質量分析と質量分析イメージング(MSI)の異なる手法で証明した。またコルチゾール産生腺腫(CPA)とのコルチゾール含有量比較で、CPAよりも単位重量当たりのコルチゾール含有量が明らかに低値であることを見出した。さらにアルドステロン合成酵素とコルチゾール合成関連酵素の免疫蛍光染色も行い、APA腫瘍内にアルドステロン産生細胞とコルチゾール産生細胞が排他的に存在する可能性を見出した。MSIを用いたコルチゾール合成酵素活性のイメージング手法も確立し、APA腫瘍内にコルチゾール合成酵素活性が検出されること、さらに同酵素活性の強弱がコルチゾール含有量を規定する因子のひとつである可能性を見出した。 APA腫瘍内コルチゾール合成機序の解明に向け、ゲノム解析によりコルチゾール合成の自律性獲得に関与する既知のドライバー遺伝子変異がAPAに検出されないことを確認した。またトランスクリプトーム解析によりAPAにおけるコルチゾール合成関連酵素の遺伝子発現量はCPAと比較して差が見られなかったが、一方でMC2Rの遺伝子発現量が上昇していることを見出した。さらに正常副腎皮質組織のシングルセルトランスクリプトーム解析(scRNA-seq)でAPA前病変の同定に成功し、分化経路推定解析によって同病変が球状層細胞に由来することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関する準備状況として、九州大学病院倫理委員会の承認が取得済であったこと、副腎皮質腫瘍検体が一定数収集済であった。そのため既存の手法を用いた腫瘍検体の解析は速やかに開始できた。一方でMSIを用いたコルチゾール合成酵素活性メージング手法の確立に時間を要する可能性があったが、APAだけでなく陽性コントロールとしてCPAも用いて条件検討を進めたことで手法確立に至った。おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
APA腫瘍内コルチゾール合成の証明は、APAにおけるステロイドホルモン合成の多様性を示唆する。ゲノム解析、トランスクリプトーム解析に加えて網羅的ステロイド代謝産物解析(ステロイドミクス)を開始しており、各階層の解析結果を統合することで、APAの代謝特性とその形成機構を解明する。またAPA腫瘍組織とAPA前病変および正常副腎皮質組織の統合オミクス解析結果を照合し、さらにAPA腫瘍組織のscRNA-seqを追加して分化経路推定解析によりAPAの発生母地解明を目指す。
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