研究課題
若手研究
脂質異常症の関連疾患である心臓血管病や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が世界的に増加しているが、これらの治療選択は十分でない。このような中、申請者はアンジオポエチン様因子3(ANGPTL3)を標的とした脂質異常症ワクチンが過食肥満モデルマウスの脂質プロファイルを改善するProof of conceptを得た。本申請研究では、動物モデルを用いた検討により、同ワクチンのNAFLD/NASH-肝臓がんおよび動脈硬化病態進展に対する効果と安全性を明らかにする。本申請研究は脂質異常症関連疾患である動脈硬化および/NAFLD/NASH-肝臓がん治療法開発のための重要な基盤となる。
動脈硬化性疾患などの脂質異常症関連疾患の増加に対し、治療選択は十分ではない。申請者は、過去の研究で肥満モデルマウスにおいてANGPTL3を標的としたワクチンが脂質プロファイルを改善することを確認した。実用化に向け、B細胞およびT細胞エピトープの最適化が進展した。現行のワクチンはヒトとマウスの共通配列を持つ10アミノ酸で構成されるが、短縮や修飾を加えたエピトープでも同等の効果が確認された。糖尿病モデルマウスや、家族性高コレステロール血症モデルマウスでも同様の効果が見られた。T細胞エピトープについては、別のキャリアに置き換えたワクチンでも従来型と同様の効果が確認され、実用化に向けた改良が進んだ。
本研究の目的は、脂質異常症およびその関連疾患に対するANGPTL3抑制ワクチンの安全性と有効性を動物実験で確認し、臨床応用の可能性を探ることである。ANGPTL3は血管新生や脂質制御に関与しており、現在ではヒト化抗ANGPTL3モノクローナル抗体が日本や欧米で家族性高コレステロール血症の治療薬として承認されている。しかしながら、抗体薬等のバイオ医薬品は薬価が高く、患者や社会に対する経済的負担を増大させるため、費用対効果に優れたANGPTL3ワクチンの開発が重要である。また、本ワクチンは、既存薬が何らかの理由で使用できない患者に対するセカンドライン薬としても有用である。
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