研究課題/領域番号 |
22K16445
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
桑原 淳 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (00512162)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 腫瘍 / 遠隔転移 / ペプチド / 癌の浸潤・転移抑制 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、神経細胞や血管内皮細胞・血液系細胞などに広く発現するCD200分子のsplicing variant であるCD200str(以下CD200S)が、マクロファージやリンパ球の活性化によって抗腫瘍免疫促進効果を発揮し、ラット腫瘍モデルの致死率および肺転移率を大幅に抑制しておりChloride intracellular channel protein 2 (CLIC2)がCD200Sで高発現していることを見出した。CLIC2のMMP14活性抑制ドメインを同定し、安全で新規なMMP14阻害剤開発に向けたプロトタイプとなることを示し、癌の浸潤・転移抑制剤として使用することを目指す。
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研究実績の概要 |
CLIC2は正常組織血管内皮細胞に特異的に発現しており、タイトジャンクションの維持に重要な働きをしていることを報告した(Ueno, Ozaki et al, Tissue Barriers, 2019)。肺転移モデルの原発巣、転移巣におけるRNA発現の比較からCLIC2が転移浸潤の抑制に関わり、さらにはCLIC2が正常組織や良性腫瘍が転移や浸潤を起こさない理由となっていると考えた。実際に、髄膜腫Grade IのCLIC2発現は特に高く、膠芽腫やGrade II 髄膜腫では低いことが判明、またCLIC2発現の高さはPFSの長さと正の相関をしていた。 CLIC2はほとんど研究されておらず、特に腫瘍との関連では最も詳しい研究が我々の論文(Ueno, Ozaki et al, およびOzaki et al.論文)である。MMP阻害剤は、がんの遠隔転移や浸潤を抑制する薬物として非常に多くのものが開発されてきたが、結局、臨床応用に至ったものはまだ一つもない。MMP14も転移浸潤を抑制する上で、極めて優れた標的であることは理解されているが、その阻害剤は臨床応用には至っていない。CLIC2由来ペプチドは、少なくとも肝障害や腎障害は引き起こさないものと期待され、作用もMMP14に限局するため、画期的な新薬候補となるものと期待している。 従来、良性腫瘍がなぜ転移浸潤しないのかよくわかっていなかった、さらに言えば、正常臓器・組織の細胞がなぜ、他処に転移していかないのか、よくわかっていなかった。CLICファミリーは、後生動物(多細胞生物)に広く保存されているため、生命現象の根幹に関わるものと想定されてきたが、その本質的な役割は不明のままであった。組織や器官の分化が生じて以降は、正常細胞はその場所にとどまる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は分子細胞生理学講座の全面的協力を得て遂行される。研究代表者である桑原が研究全体の進行・計画・実施・データのとりまとめを行う。肺転移モデルとしてのC200細胞移植によるラット作製などin vivo実験の全て、in vitro実験のうち、RT-PCRやWestern blottingやシグナル伝達経路の解析などは桑原が分子細胞生理学教室職員とともに実施する。
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今後の研究の推進方策 |
CLIC2は後生動物で広く保存されているCLICファミリータンパク質の一つで、in vitro実験系では塩化物イオンチャネルを形成するとされてきたが、実際に何をしているかはよくわかっていない。本研究では、CLIC2のMMP14活性抑制ドメインを同定し、安全で新規なMMP14阻害剤開発に向けたプロトタイプとなることを示し、癌の浸潤・転移抑制剤として使用することを目指す。 また次世代シークエンサーでは、腫瘍免疫の活性化を示唆するデータが得られている(ケモカイン、T細胞系マーカー、グランザイム等の発現上昇)。今後はその解析を進めていく。
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