研究課題/領域番号 |
22K16450
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
芝 聡美 自治医科大学, 医学部, 助教 (70721603)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 乳癌 / 糖尿病 / メトホルミン / 免疫学的腫瘍微小環境 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 腫瘍関連マクロファージ / 術前化学療法 / 糖尿病合併乳癌 / 好中球細胞外トラップ / 発癌 / 腫瘍浸潤好中球 / 転移 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、糖尿病を有する宿主の好中球は細胞外トラップ(NETs)を形成しやすく、これが合併症の発症の要因であることが解ってきたが、この事象が糖尿病患者における発癌にどう関与しているか?については不明である。本研究では、糖尿病モデルマウスと乳癌発生モデルマウスを用いた動物実験と外科的切除を受けたヒト乳癌組織を用いた免疫染色を施行し、糖尿病患者におけるNETsの亢進状態が、乳癌の発生にどのような影響を与えているのか?を明らかにする。また、がんの病態や患者予後と相関することが指摘されている抗糖尿病薬がこの現象に如何なる影響を与えているのか?を明らかにし、糖尿病合併乳癌の予防における新たな対策法を見出す。
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研究実績の概要 |
近年の疫学的調査の結果から、メトホルミンは様々な癌の発生や進行を抑制する効果があることが示唆されている。そこで、2006年から2020年、当科にて手術を受けた2型糖尿病を有する乳がん患者177名におけるメトホルミンの臨床効果を評価した。177人の乳がん患者を対象にその予後を検討すると、観察期間中央値67か月の時点で、メトホルミン非服用患者128名中17名(13.3%)に再発を認めた。内訳は、肺に9例、骨に5例、肝臓に4例、脳に2例リンパ節他に7例(重複を含む)であった。一方、手術前または後にメトホルミンを投与された患者49名では肺と肝臓に1例づつ、計2名(4.1%)に再発を認めたのみで、メトホルミンの服用が無再発生存期間(RFS)の延長につながっている事実が確認された。術前化学療法を受けた40名でその組織学的奏功を検討すると、メトホルミン服用患者で有意に完全消失率(pCR率)が高かった。(4/31 vs 5/9, p=0.016) 傾向スコアマッチングで抽出した20例、23例の切除標本を用いて、腫瘍関連マクロファージ(TAM)と腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の頻度を多重免疫組織化学(IHC)によって評価したところ、メトホルミン服用患者では非服用患者と比較して、CD68(+)TAM、特にCD68(+)CD163(+)M2型のTAMの密度が有意に低下し(p < 0.01)、CD3(+)およびCD8(+)TIL密度が高く、CD8(+)/CD3(+) 比も有意に高かった(p < 0.01)。 本研究結果は、メトホルミンが免疫学的腫瘍微小環境を調節する役割があり、これが糖尿病合併乳がん患者の転帰改善に寄与している可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプルサイズは少ないが、乳癌患者においてもメトホルミンの服用が予後や術前化学療法の奏功を相関している可能性を示唆する事実が判明した。また、免疫染色にてメトホルミンが免疫学的腫瘍微小環境を調節することを示唆するデータも得られた。
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今後の研究の推進方策 |
症例の追加と予後調査の継続。免疫染色では、腫瘍関連好中球について追加検討を行う予定である。
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