研究課題/領域番号 |
22K16453
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
恒松 雅 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70912757)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 肝細胞癌 / エクソソーム / がん関連線維芽細胞 / miRNA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では肝細胞癌の発癌・進展における癌関連線維芽細胞(CAF)由来のエクソソソームと上皮内転間葉転換(EMT)の関連を解明し、エクソソーム内の責任タンパクを同定する。最終的にEMTの制御を介して癌の浸潤制御を行う革新的な治療方法を見出すことを目的とする。エクソソームがmiRNAを含むのか、それらが肝細胞癌に悪性化にどのように関与しているかを解明する。
|
研究実績の概要 |
糖尿病、脂質異常症の増加により非B非C型肝細胞癌が増加傾向にあり、肝細胞癌死亡数は臓器別で第5位となっている。さらに、国立がんセンターによる肝がんの10年生存率では15.3%と5大がん中最低であり、腫瘍学的悪性度の解明と治療法の確立が急務であると考えられる(国立研究開発法人国立がん研究センター2016年1月発表データより)。肝細胞癌の特徴は病勢の進行とともに門脈を含む肝内血管内侵襲を容易にきたし肝内転移および他臓器転移へと進展する。 癌微小環境のうち細胞間シグナル伝達として癌細胞の活性化において中心的役割を果たしていると考えられる癌関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblast;CAF)が近年注目を集めている。また、バイオマーカや細胞間の情報伝達物質として、細胞外小胞体であるエクソソームの役割が徐々に明らかになってきており、癌の微小環境においても癌の発育進展において重要な役割を担っている。特に、エクソソームを介して癌細胞の上皮内転間葉転を誘導し、癌の増殖浸潤を担っている可能性がある。肝細胞が慢性炎症の環境下におかれると、肝星細胞が活性化し線維芽細胞となり肝線維化を促進する。線維芽細胞は間質の線維の増生のみならず多くの増殖因子を放出している。肝細胞における慢性炎症を背景に発癌、増殖する肝細胞癌においても線維芽細胞はCAFとして癌微小環境を形成し、重要な役割を担っていると考えられている。 本研究では肝細胞癌の癌微小環境における間質細胞のうち、CAFに注目し、特にCAF由来エクソソームの役割とその機能を明らかにし、肝細胞癌治療あるいは肝発癌予防の新たなアプローチ法を探索することを目的としている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌部、非癌部からそれぞれ単離分離した線維芽細胞を含む培養液を、肝癌細胞株(Huh7、hep3B)に添加してCell proliferation、Colony formation、Scratch、Migrationアッセイにおいて細胞遊走能、浸潤能の増加を確認した。 次に、線維芽細胞を含む培養液を超遠心機にかけ、ナノ粒子解析システム(NanoSight)で高純度のエクソソームが抽出されていることを確認した。抽出したエクソソームを、ふたたび肝癌細胞株(Huh7、hep3B)に添加してCell proliferation、Colony formation、Scratch、Migrationアッセイにおいて細胞遊走能、浸潤能の増加を確認した。 さらに、抽出したエクソソームをマイクロアレイにかけて解析して、miRNAの増減を確認した。このうち、2種類のmiRNAに注目した。
|
今後の研究の推進方策 |
同定した2種類のmiRNAをCAFに強制発現させ、強制発現CAF由来のエクソソームを分離し肝癌細胞株に添加する。MigrationおよびInvasionアッセイを行い、肝細胞癌の増殖、浸潤、遊走、転移に寄与しているのか評価する。 また、同定したmiRNAの標的たんぱく質をデータベースで検索する。これまで当科にて蓄積していた肝細胞癌病理検体において標的たんぱく質の免疫染色を行い、発現の程度を確認する。免疫染色陽性、陰性例で肝細胞癌の全生存期間、無病生存期間を解析し、予後規定因子であるのかどうか、すなわち、標的たんぱく質がバイオマーカとして有用なのか確認する。 最終的に、CAFに含まれるmiRNAが進行肝細胞癌の革新的な治療薬創薬のアプローチになりえるのかを評価する。
|