研究課題
若手研究
腎ラブドイド腫瘍(Rhabdoid tumor of the kidney: RTK)は5年生存率が26%という非常に予後が悪い小児腎腫瘍であり、新規治療法の開発が切望される。近年注目されている核酸医薬はmiRNAやmRNAを標的とすることから、特異性が高く副作用も少ない次世代の分子標的薬として期待されている。これまでに申請者らは、RTK細胞株を用いたmiRNA-mRNA比較統合解析により、RTKに特異的に発現変化を起こしているmiRNAとmRNAの組み合わせを同定している。本研究ではこれらのmiRNA/mRNAがRTKにおける核酸医薬の治療標的となりうるかを検討する。
前年度は、miRNA-mRNA比較統合解析により、腎ラブドイド腫瘍(RTK)の腫瘍関連遺伝子の候補としてNeuropilin 1(NRP1)を同定した。さらに、RTK細胞においてNRP1の発現を抑制すると、細胞浸潤能と遊走能が抑制されることがわかった。今年度は、RTK細胞においてNRP1の発現抑制により発現が変化する遺伝子を絞り込むことを目的に、マイクロアレイを用いた網羅的発現解析を行った。結果、RTK細胞においてNRP1の発現抑制により発現が低下する遺伝子を28個、発現が上昇する遺伝子を24個抽出した。抽出した遺伝子群には細胞運動に関与するものも含まれており、これらの遺伝子を対象に、NRP1との関係性やRTK細胞における役割について検討を継続している。一方、miRNA-mRNA比較統合解析により、NRP1を標的とし、かつRTK細胞株において低発現である8つのmiRNAを同定した。そのうち、miR-320aとmiR-320bについてqRT-PCRを施行したが、コントロールのヒト胎児正常腎由来細胞株HEK293Tと比較して、RTK細胞株において低発現であることを確認できなかった。また、NRP1以外のRTK腫瘍関連遺伝子の探索も継続した。miRNA-mRNA比較統合解析により、RTK細胞で高発現のmiRNAの標的遺伝子であり、かつRTK細胞株において低発現である28の遺伝子を抽出した。この28の遺伝子を対象にGO enrichment解析を行い、RTK細胞における発現変動遺伝子の機能的特徴を検討したが、有意な結果は得られなかった。以上より、本研究期間内に得られた結論として、NRP1はRTKにおいてOncogeneとして腫瘍細胞の浸潤や遊走を促進する可能性があり、RTKの新たな治療標的となりうることが示唆された。
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Oncology Letters
巻: 27 号: 3 ページ: 128-128
10.3892/ol.2024.14260