研究課題
若手研究
根治切除不能な洗浄細胞診(CY)や腹膜播種(P)陽性胃癌に対しては白金系抗癌剤を用いた化学療法が標準治療であるが予後不良である。化学療法後にCYやPが陰転化し、根治切除が施行されたコンバージョン手術症例の良好な治療成績が報告されているが、化学療法奏効の分子背景は不明である。本研究の目的は、「コンバージョン手術症例の予測を目指し、CYやP陽性胃癌の化学療法奏効の背景にある遺伝子異常を解明すること」である。
本研究の目的は、「コンバージョン手術の患者選択最適化を目指し、腹腔洗浄細胞診(CY)や腹膜播種(P)陽性胃癌の化学療法奏効の背景にある遺伝子異常としてARID1A変異やそのタンパク質発現の臨床的意義を解明すること」である。本年度は、1. 肉眼型に応じたCY1P0胃癌症例における最適な初期治療の検討、2. 胃癌遺伝子解析症例におけるARID1A遺伝子変異とタンパク質発現の検討、切除不能進行再発胃癌における一次化学療法の効果との関連の検討を行った。1.CY1P0胃癌症例において肉眼型に着目して化学療法先行治療(Initial-C)の有効性の検討を行った。 CY1P0胃癌に対して、Iniital-Cまたは手術先行治療を施行された189例を対象とし、4型と非4型にわけ検討した。4型においてはIniital-Cは多変量解析ではは予後良好因子とはならなかった.一方,非4型においてはIniital-CはInitial-Sに比べ有意に予後良好であり、Iniital-Cは予後良好因子であったため、非4型胃癌においてIniital-Cは、予後を改善する可能性がある。2.胃切除で得られた腫瘍組織のFFPE検体を用いて癌遺伝子パネルにて遺伝子解析を実施した症例からARID1A遺伝子の欠失型変異陽性の5例と変異陰性2例を選択した。ARID1Aタンパク質発現は免疫組織化学にて評価した。ARID1A欠失型変異陽性の5例では全例でARID1Aタンパク質発現を認めなかったが、変異陰性の2例ではタンパク質発現を認めた。ARID1A欠失型変異ではタンパク質発現が欠失していることが解明されたため、以後は遺伝子解析によるARID1A欠失型変異の有無と臨床経過との関連を検討した。ARID1A欠失型変異の有無と切除不能進行再発胃癌に対する一次化学療法後の無増悪生存や全生存には有意な関連は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
CY1P0胃癌に対する最適な初期治療を臨床情報の解析で明らかにし、学術論文として投稿することができた。さらに、化学療法奏効に関与するクロマチンリモデリング因子の一つであるARID1A遺伝子の欠失型変異と切除不能進行再発胃癌の一次化学療法の効果との関連も検討できており、概ね順調に進展している。
今後は遺伝子変異解析を実施した胃癌症例におけるクロマチンリモデリング因子に関与する複数の遺伝子の異常やDNA修復遺伝子の異常を包括的に評価し、治療効果や予後との関連を検討する。研究結果は学術論文として投稿予定である。
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