研究課題/領域番号 |
22K16491
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
清住 雄希 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (30827324)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 大腸癌 / MSI-H / 癌免疫療法 / 免疫チェックポイント阻害薬 / IDO1 / 免疫療法 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
近年、免疫チェックポイント阻害薬が消化器癌において既に臨床実装されたことで更なる治療成績向上が期待されているが、大腸癌においては、MMR deficient (dMMR)またはMSI-Hという遺伝子学的な特徴を持ったごく一部の患者への効果が証明されているのみであり、適応は非常に限定的である。 本研究の目的は、大腸癌において免疫領域で重要なPD1/PD-L1経路、細胞障害性T細胞のアポトーシスやTregを誘導して免疫寛容を促すIDO1に着目し、治療効果予測バイオマーカーの確立を行うことである。更に、切除不能大腸癌における免疫細胞発現パターンとそのメカニズムを明らかにすることで、バイオマーカーの実用性の裏づけを行い、臨床実装に発展させる。
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研究実績の概要 |
大腸癌における治療効果バイオマーカー探索のため、まず大腸癌症例979例の臨床病理学的因子を調査した。StageIV症例198例を含む手術療法、化学療法症例の予後を解析し、免疫染色を行うためのサンプルづくりを実施した。本研究において解析する因子についてもこの時点で整理した。 まず、免疫学的背景を分類するため、以前の研究より当科で行っているCD3、CD4、CD8、FOXP3の免疫染色を行い、ハイブリッドセルカウンター、BZ-Xを用いて陽性リンパ球数のカウントを行った。こちらは腫瘍先進部3視野のリンパ球数の平均値を算出する方法で、データごとの差異が最小限にとどまるよう工夫し、これまでも同様の手法を用いて報告している。腫瘍浸潤リンパ球数と予後の関連性を解析すると、CD3、CD8、FOXP3低発現群で有意に予後が不良であるという結果が得られ、一方でCD4陽性リンパ球においては有意差を認めなかった。これらの解析と並行して、大腸癌肝転移症例181例を抽出しており、現在DNA抽出、real-time PCR、免疫染色などの実験準備を進めている。 次に、本研究の中核的解析であるMSI-H症例の探索を行った。大腸癌組織の凍結標本よりDNAを抽出し、ベセスダ分類に則ってBAT25、BAT26というMSIのマーカーを用いたPCRを行い、DNAシークエンサーで解析を実施した。Microsatelliteの反復回数に変化がある症例をMSI症例、変化がない症例をMSS症例とし、256例の解析を行った。256例中、MSI-Hの結果を得たものは30例(11.7%)であり、過去の報告に合致する結果が得られた。現在、本研究結果に基づき、MSI-H群 vs MSS群に分類し、臨床病理学的特徴の解析、前述の腫瘍浸潤リンパ球数との関連性について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、900例以上の大腸癌症例を集積し、臨床病理学的背景の解析を実施していること、当該症例の免疫学的特徴を解析できていること、MSI測定が順調に進んでおり、既に解析を行うことができる段階に進んでいることから、概ね当初の研究計画通りに進んでいると判断している。また、大腸癌肝転移症例についても解析可能なサンプルが十分に集積できており、これらの症例を含めた網羅的な検討も既に開始している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はこれまで概ね計画通りに進んでおり、今後はIDO1発現のPCR法による解析、細胞株における発現、共培養実験、また質量分析器を用いた解析などに進む予定である。更にPyrosequencingを用いて大腸癌におけるIDO1promotor領域におけるメチル化を測定し、Epigeneticな制御を受けていることを確認することができれば、化学療法中の腫瘍免疫学的変化との関連性を評価する因子の同定につながることが予測されるため、引き続き実験を進めていく。 腫瘍浸潤リンパ球については二重免疫染色、蛍光イメージングソフトを用いた解析で、大腸癌内における免疫関連因子の因果関係を明らかにする。 上記のin vitroの結果が確立すればモデルマウスを用いてIDO1に重要なTrp-Kyn-Ahr経路のt代謝産物を測定し、腫瘍増殖や腫瘍環境との因果関係についてin vivoで確認することが可能である。 並行して、共同研究先のHigh Volume Centerであるがん研究会有明病院に蓄積された大量の臨床データでValidationを行い、実験結果が実臨床に沿った研究結果であることを明らかにしていく。
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