研究課題
若手研究
がんの病態における好中球の役割が注目されてきている。低比重好中球(LDN)は遠心分離にて単核球の分画に分離され、通常の好中球とは異なる特殊な機能を持つ細胞群で、進行消化器癌患者の血中で増加し、多量のNETを産生するとともにT細胞の増殖を強く抑制することが解ってきた。本研究では、進行消化器癌患者の末梢血エクソソーム中のmicroRNAが、骨髄における顆粒球の分化、末梢への流出(Egress)現象に深く関与しており、遠隔転移の成立を促進しているのではないか?という仮説を立て、その正当性を動物実験にて検証する。その成果に基づき進行癌患者に対する新規核酸医薬の開発につなげることを最終目的とする。
根治的結腸切除術を受けた患者において、CD45(+) 白血球中のCD66b(+) 低比重好中球球LDNの数は手術直後に顕著に増加し、LDN 高値群の無再発生存期間は有意に短く、独立した予後予測因子であった 。 ステージ III の患者において、補助化学療法はLDN 高値群のRFSを有意に改善させたが、LDN低値群では予後に差を認めなかった。このLDNは短期間の培養後に大量の好中球細胞外トラップ(NET)を生成し、in vitro で腫瘍細胞を効率的に捕獲した。LDNは大腸癌術後の早期時点で外科的ストレスによって循環血液中に誘導され、NETの産生を介して再発に関連すると考えられた。
手術前後の末梢血中の低比重好中球(LDN)の表現型を特定し、アポトーシスを起こしにくいという新規知見を得ることができた。また、100例を超える臨床検体用いて、術後LDNの割合が再発を予測する新たなバイオマーカーとなりうることを示唆する結果が得られた。また、ステージ III の大腸癌患者において、補助化学療法はLDN 高値群の予後を有意に改善させたが、LDN低値群では予後に差を認めなかったことから、大腸癌術後の補助化学療法の適応に関する示唆を与えることができた点で社会的意義が大きい。
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