研究課題/領域番号 |
22K16588
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
神 久予 千葉大学, 大学院医学研究院, 技術職員 (10938187)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | SARS-CoV-2 / spike protein / UPR / COVID-19 / 慢性疲労症候群 |
研究開始時の研究の概要 |
COVID-19後遺症患者では慢性疲労症候群、筋痛症性脳脊髄炎と呼ばれる病態に酷似した症状が見れる。慢性疲労症候群はウイルス感染による神経炎症に関連すると推測されていたが、確証はなかった。COVID-19後遺症患者ではSARS-CoV-2感染が明らかで、ウイルス感染に続発する慢性疲労症候群の疾患モデルと考えることが出来る。本研究では今まで原因不明とされていた慢性疲労症候群とCOVID-19後遺症の病態の解明とsiRNAなどを利用した治療戦略を検討する。
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研究実績の概要 |
COVID19の後遺症が慢性疲労症候群/筋痛症性脳脊髄炎と呼ばれる症状に似ていることから、ウイルス感染後の慢性疲労症候群あるいは線維筋痛症の病態モデルと なることに着目した。本研究ではヒト線維芽細胞種SH-SY5Y細胞とヒトミグログリア細胞株HMC3細胞にSARS-CoV-2の主たる構成蛋白質であるspike proteinを遺伝 子導入して発現させ、細胞障害を評価することを目的とした。SARS-CoV-2 Spike Gene plasmidをSino Biological社から入手し、plasmid prepにてplasmidを精 製した。精製したplasmidをリポフェクチン (Promega, FuGENE HD) でtransfectionを行った。昨年度は神経系の細胞よりも、より発現しやすいHeLa細胞 でtransfectionを試みたところ、transfectionが成功したことが確認できた。本年度は神経細胞であるneuro2aやSHSY5Y細胞でtransfectionを試みたところ、どちらも細胞内のspike proteinが発現しており、transfectionが成功していることが確認できた。さらにその細胞を使用して、ウエスタンブロット、免疫染色を行い、小胞体関連タンパクや、Unfolded Protein Responseに関連したタンパクの発現を観察した。免疫染色から細胞内のspike proteinはゴルジ体内に一部局在していることが確認でき、また UPR関連タンパクのBiPやKDER receptorとも一部共局在していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞とヒトミクログリア細胞株HMC3細胞にSARS-CoV-2の主たる構成タンパク質であるspike proteinを遺伝子導入して発 現させ、COVID-19の急性期、後遺症において感染細胞でのウイルスタンパク質の翻訳自体がUPRを介して、炎症、細胞障害、細胞死を起こす可能性を検討すると していた。本年度はneuro2a, SHSY5Yなどの神経細胞にspike proteinを発現させることに成功し、免疫染色から細胞内のspike proteinはゴルジ体内に一部局在していることが確認でき、また UPR関連タンパクのBiPやKDER receptorとも一部共局在していることが確認できた。しかしウエスタンブロットによる解析の結果は、小胞体ストレスの転写因子ATF6 の発現増加、や小胞 体分子シャペロンBiP/GRP78 の発現の増加、また小胞体ストレスによって細胞障害が起こると細胞死を誘導する転写因子CHOP の発現やcaspase 3 の活性化は変化が見られなかった。spike proteinと小胞体ストレスとの関連については更なる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
UPR関連転写因子XBP-1, ATF6、小胞体分子シャペロンBiP/GRP78 、小胞体ストレスによって細胞障害が起こると細胞死を 誘導する転写因子CHOP の発現やcaspase 3 などの変化をウエスタンブロットで確認することができなかった。spike proteinを発現した細胞が培養細胞全体の1割以下とごく少ないため、spike proteinポジティブ細胞の動態をウエスタンブロットでは観察しきれていない可能性が考えられる。spike proteinポジティブ細胞だけを単離して解析する方法を模索する。また小胞体機能を補助する pharmacological chaperone として、tauroursodeoxycholic acidと4-phenylbutyric acid を事前投与する群を設け、同様の解析を行い細胞保護効果を検討す る。RNAを調整し、次世代シークエンサーによるRNA-sequencingにより網羅的に遺伝子発現を解析する。疲労感にはTGF-β、interferon, IL-6, TNF alphaなどの サイトカインが関与していると推測されており、こうしたサイトカインの発現と、その発現誘導を調節するXBP-1、JNKなどの細胞内情報伝達分子の遺伝子発現変 化に特に着目する。中心的な細胞内情報伝達分子を同定出来れば、siRNAを用いてその遺伝子発現を抑制し、下流のサイトカインの発現誘導が減少するかどうか をreal time PCRによってモニターする。
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