研究課題/領域番号 |
22K16685
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬塲 庸平 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (20577465)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | アッセンブロイド / iPS細胞 / 虚血耐性 / 脳梗塞 / 大脳オルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
iPS細胞から作り出した脳オルガノイドを組み合わせて作出するアッセンブロイドは、ヒトの脳に類似した特徴を持つことが知られています。このアッセンブロイドを、ヒトの脳梗塞に類似した環境条件(低酸素・低栄養)に置くことにより、培養皿の中でヒトの脳梗塞を再現する方法を開発します。さらに脳梗塞を軽減するためにヒトの脳にもともと存在する仕組み”虚血耐性現象”の解明を目指します。従来マウスなどの脳を用いた研究では明らかにできなかった、ヒト脳固有の脳梗塞の病態解明や治療法開発につながる可能性があると考えられます。
|
研究実績の概要 |
ヒト多能性幹細胞から誘導した大脳オルガノイドを組み合わせることで、より精緻なヒト脳のモデルを作成する"アッセンブロイド"を、ヒト脳梗塞に類似した環境条件(低酸素・低栄養)に置くことにより、in vitroでヒトの脳梗塞の初期過程を再現するモデルを開発します。モデルを用いることで低酸素により生じる神経障害をモデル化し、さらに虚血に対して耐性を獲得する虚血耐性現象の解明を目指します。ヒト細胞を用いることで、より実際の患者体内で生じる変化に近い、遺伝子発現変化などを検知できる可能性があると考えています。本年は、主に低酸素条件下での培養系の確立を行っています。大脳オルガノイド技術の特性上、batch間での変動が大きいことが知られており、これを克服するためにはより多くサンプルでの実験を要します。この点が予想以上に系の構築を複雑にしています。系の妥当性の確認の実験に、多くのサンプルを用いることは無駄が多くなるため、これまでの検討で安定的に誘導することができるようになっている大脳オルガノイド(201B7株)を市販の低酸素培養キットにより構築した低酸素培養条件下で培養し、トランスクリプトーム解析などをおこなうためのサンプリングを行ないました。iPS細胞を拡大培養し、SMAD阻害剤およびWnt阻害剤を用いて、大脳オルガノイドを誘導、大脳皮質神経細胞が十分に出現すると考えられるday70のサンプルを用いて、低酸素条件下での培養実験を行いました。酸素濃度5%, 10%, 15%, コントロール(20%)とし、それぞれの培養時間は30分、60分、120分とし、各条件での細胞サンプル・遺伝子解析サンプルの収集を行いました。サンプルは凍結保存し、現在網羅的遺伝子解析の準備を進めています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アッセンブロイドを用いた実験を予定していましたが、大脳オルガノイドおよび内側神経節隆起オルガノイドともにiPS細胞の状態や手技的な影響、確率的な問題により、batchや個々のサンプル間での違いが大きいことが明らかとなりました。そのため、実験系の構築のためには系をシンプルにしてパラメーターを少なくして、系の妥当性を判断することとしました。大脳オルガノイドのみを用いて、低酸素培養キット(スギヤマゲン社)を用いた低酸素条件下により、トランスクリプトームの変化や細胞死などの変化が生じうるのかどうかを確認することとしました。当初より系の妥当性の判断、確立に時間を要しており、研究の進捗が停滞するに至っています。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、採取したサンプルのRNAseq法による網羅的遺伝子発現解析を行い、虚血負荷に相応する変化が大脳オルガノイドに生じていることを確認します。また組織学的変化によりアポトーシスや細胞毒性が生じることも検討する予定です。サンプリングはすでに終えており、低酸素培養条件が適切に構築できていることが確認されれば、すでに誘導技術は構築済みである内側神経節隆起オルガノイドを誘導し、さまざまな組成のアッセンブロイド作成を速やかに行い、予定の実験を行う予定です。しかしながら、低酸素による変化が、大脳オルガノイド単独でも検知困難であれば、十分な条件が形成できていない可能性があるため、その場合には低酸素時間を延長したり、培地内の残存酸素を除去する方策を検討したりしなければならないと考えています。
|