研究課題/領域番号 |
22K16689
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 大介 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (30750492)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 悪性グリオーマ / 脳腫瘍 / microRNA / 老化 / 加齢 / 悪性化 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞老化はあらゆるストレスによって誘導され、「がん」をはじめとする様々な加齢性疾患の発症や個体老化において重要な役割を担っている。他のがんと同様に、原発性脳腫瘍の中で最も頻度の高い悪性腫瘍である「悪性グリオーマ」は、高齢者の罹患率が高く、高齢患者の予後は極めて不良である。年齢は悪性グリオーマの予後決定因子の1つであり、加齢による脳の老化が腫瘍悪性化に影響していることが推測されるが、未だ「脳の老化」と「腫瘍悪性化のメカニズム」と関係は明らかにされていない。本研究は申請者の専門分野でもある「microRNA」に着目し、老化が及ぼす脳腫瘍悪性化のメカニズムの解明と新規治療法としての臨床応用を目指す。
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研究実績の概要 |
1. 高齢悪性グリオーマ患者に発現する特異的遺伝子(mRNA)探索 TCGAデータ解析にて、高齢群の腫瘍内ではNLRP6やPLA2R1など炎症関連遺伝子の発現が上昇し、免疫応答やSASPに関連する経路が亢進していた。一方、SCGN、SLC18A1、SLC18A3などneuron/synapse関連遺伝子の発現やneuron/synapse関連経路が低下しており、特にSCGN発現低下群で有意に生存期間が短縮していた。 2.特異的microRNAに対する標的遺伝子の特定 TCGAデータセット(miRNA)中の悪性グリオーマ409例を高齢群(61歳以上:203例)と非高齢群(60歳以下:206例)に分け、腫瘍内miRNA発現を解析したところ、高齢群で有意に発現異常を示したmiRNAは8個(上昇3個, 低下5個)であった。これらの中で最も生命予後に関連するmiRNAとして、発現上昇を示すmiR-Xと発現低下を示すmiR-Yを同定した。次に、TCGAデータセット(mRNA)の悪性グリオーマ144例を高齢群(61歳以上:65例)と非高齢群(60歳以下:79例)に分けて腫瘍内mRNA発現を解析し、高齢群で有意に発現異常を示したmRNAを44個同定した。TargetScanにて検索し得た標的遺伝子はmiR-Xで4048個、miR-Yで4704個であり、これらを同定した44個と照合した結果、miR-Xに対する標的遺伝子としてSCGN、miR-Yに対する標的遺伝子としてPLA2G3を同定した。 3. 臨床検体(ヒト腫瘍組織)における標的遺伝子の発現 腫瘍組織を用いて免疫染色を行い、高齢群(80歳以上)と非高齢群(60歳未満)で各々6検体を使用してSCGNとPLA2G3の発現を比較した。組織内発現において明確な違いは認めなかったが、高齢群においてSCGNの発現が低く、PLA2G3の発現は高い傾向を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢悪性グリオーマに特異的に発現するmiRNAを2つ同定し、標的遺伝子も特定している。さらに、発現解析も部分的に完了しているが、in vitroおよびin vivo実験による機能解析実験があまり進んでいない。 ただ、関連学会(日本脳腫瘍学会や日本脳神経外科学会)において研究成果は発表できている。
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今後の研究の推進方策 |
同定した2つのmiRNAと標的遺伝子に関する機能解析実験を進める進める予定である。 また、関連学会(日本脳腫瘍学会、日本脳神経外科学会、北米脳腫瘍学会など)において研究成果を発表し、論文も執筆する予定である。
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