研究課題/領域番号 |
22K16715
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 孝彬 京都大学, 医学研究科, 助教 (50835395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 骨粗鬆 / ストロンチウム / テリパラチド / チタン / 表面処理 / 骨粗鬆症 / インプラント |
研究開始時の研究の概要 |
骨粗鬆症を有する患者の椎体は脆弱であり、インプラント(主にスクリューと椎体間スペーサー)を用いた脊椎固定術が必要となった場合、スクリューが椎体から引き抜ける、あるいはスペーサーが椎体内に沈み込む、といったfailureが高率に起こり再手術が必要になるという問題点がある 。そこで、本研究の目的は、骨粗鬆症椎体に対する脊椎固定術において、整形外科領域における骨粗鬆症の標準的治療薬である副甲状腺ホルモン製剤テリパラチド(PTH1-34)を併用することで金属インプラントと骨の結合性を促進できるかどうかを検討することである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、チタンインプラントのSr(ストロンチウム)表面化学処理とテリパラチド(PTH1-34)の骨形成促進作用を組み合わせることにより 、脆弱な骨粗鬆症椎体において骨とインプラントの強固な結合が可能になるかを検討することである。 令和4年度の成果として、第一に、過去に報告されている標準的な方法に準じ、日本白色家兎の両側卵巣を切除し、その2週後からメチルプレドニゾロン1mg/kg/dayを4週間筋注し骨粗鬆症ウサギモデルを作成した。大腿骨遠位部のマイクロCTを撮影し骨形態を計測した結果、正常なウサギに比して骨密度が低下し骨梁構造が菲薄化していることを確認した。次に、脊椎固定術モデルの前段階としてウサギ大腿骨遠位部に単純な形状(6×15mmの円柱状の緻密体)のチタンインプラントを埋入し、PTH1-34による効果を評価した。片側の大腿骨にSr表面処理を施したインプラントを埋入し、対側の脛骨に表面処理なしのインプラントを埋入した。埋入後PTH1-34の間欠的投与を6週間行った(過去の論文から新生骨が結合し始める時期)。コントロール群は生理食塩水の皮下注射を行った。6週後のμCTで両群の骨形態を検討した結果、Sr処理+テリパラチド群でインプラント周囲の有意な骨密度の増加を認めた。また、埋入6週後に採取した大腿骨遠位部の検体を組織評価するため、現在樹脂包埋法による硬組織検体を作成中である。 以上の研究結果から、本研究の動物実験モデルの手技を確立した。研究立案時の仮説に矛盾しないデータが得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.骨粗鬆症ウサギの作成: 日本白色家兎の両側卵巣を切除し、その2週後からメチルプレドニゾロン1mg/kg/dayを4週間筋注し骨粗鬆症ウサギモデルを作成した。脛骨遠位部のマイクロCTを撮影し、正常なウサギに比して骨密度が低下し骨梁構造が菲薄化していることを確認した。 2.インプラント表面処理と骨粗鬆症ウサギ脛骨内に埋入したインプラントのPTH1-34による効果 (in vivo): 6×15mm円柱緻密体のチタンインプラントを作製し、Sr溶解液に浸漬した後に熱処理を加えることで表面にSrイオンを担持させた。ウサギ脛骨内に表面処理したインプラントを埋入し、PTH1-34による効果を評価した。片側の脛骨にSr表面処理を施したインプラントを埋入し、対側の脛骨に表面処理なしのインプラントを埋入した。埋入後PTH1-34の間欠的投与を6週間行った。コントロール群は生理食塩水の皮下注射を行った。6週後のμCTによる骨形態の評価にて、Sr処理+テリパラチド群でインプラント周囲の有意な骨密度の増加を認めた。 3.表面処理を施したインプラント上での前骨芽細胞の反応の評価(in vitro):MC3T3-E1(株化骨芽細胞様細胞)を表面処理したインプラント上でPTH1-34環境下で数日間培養し、インプラント上での細胞毒性をXTTアッセイにて評価した。現時点でnが少ないものの明らかな細胞毒性を示唆する結果は認めていない。 当初の予定で、骨粗鬆症モデルの作成、インプラント作製と動物埋入実験およびインプラント上でのin vitro評価の着手、を1年目で計画していた。上記の研究成果が得られていることから、当初の計画に遅れなくおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
①骨粗鬆症ウサギ脛骨内に埋入したインプラントのPTH1-34による効果 (in vivo) 6×15mm円柱緻密体のチタンインプラントを用いた実験系のnを増やしていく。インプラントと骨の界面の引き剥がし力を測定することにより力学的強度を比較する。またCTで新生骨量を定量化し、骨組織切片で骨とインプラントの結合比率を定量化し比較する。 ②表面処理を施したインプラント上での前骨芽細胞の反応の評価(in vitro) 生体内でのPTH1-34の表面化学処理インプラントへの影響のメカニズムの解明のため、インプラント上での前骨芽細胞のPTH1-34環境下での挙動の評価を継続、発展させる。すなわち、MC3T3-E1(株化骨芽細胞様細胞)を表面処理したインプラント上で過去の報告に準じたPTH1-34環境下(10-12M PTH1-34 6時間毎に投与 )で数日間培養し、細胞のインプラントへの接着性、細胞毒性、骨芽細胞への分化能・増殖能を電子顕微鏡、各種アッセイ及びリアルタイムPCRで評価する。 ③骨粗鬆症ウサギ脊椎固定モデルでのインプラントのPTH1-34による効果 (in vivo) 3D-CADソフトウェア上でCT-DICOMデータを元に、ウサギ椎体間にフィットするインプラントを設計する。この設計データからレーザー積層造形機器を用いてチタンインプラントを作製する。作製したインプラントにSr処理を施す。骨粗鬆症ウサギの第3-4腰椎椎体間に表面処理を施したインプラントを埋入する。第4-5腰椎椎体間には処理なしのインプラントを埋入する。埋入後PTH1-34の間欠的投与を12週間行う。コントロール群は生理食塩水の皮下注射を行う。12週後にインプラントと骨の界面の引き剥がし力を測定することにより力学的強度を比較する。CTで新生骨量を定量化し、骨組織切片で骨とインプラントの結合比率を定量化し比較する。
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