研究課題
若手研究
本研究では脊髄損傷と頚部脊髄症の機能予後をradiomics(人工知能によって画像所見から遺伝子や予後についての情報を得る手法)を用いて予測し、その診断根拠となる人工知能が着目している画像所見を明らかにして人間にも識別可能な客観的な所見として視覚化し新しい知見を得ることを目指す。そのため①Grad-CAM(人工知能がどこに着目しているかを示すヒートマップ)、②Vision Transformer(深層学習に替わる新しい人工知能の手法)のattention map、③教師なし学習による画像のクラスタリングと実際の予後との比較の3つのアプローチから新しい画像所見の特徴を探索する。
本研究では脊髄損傷と頚部脊髄症の機能予後を人工知能による画像解析技術であるradiomicsを用いて予測し、人間にも識別可能な客観的な所見を視覚化することを目的としていた。本研究はGrad-CAM、Vision Transformerのattention map、教師なし学習による画像のクラスタリングと実際の予後との比較の3つのアプローチから新しい画像所見の特徴を探索している。その予備研究の一環であるが、いくつかの論文発表が行われた。(Mukaihata, Maki et al. Spine, 2023)では、脊椎感染症と脊椎のModic変化の鑑別において、畳み込みニューラルネットワークを用いた手法が有効であることが示された。また、(Shimizu, Maki et al. J Clin Neurosci, 2023)では、脊髄損傷患者の神経学的予後を予測するために、急性期に行われた手術の効果に関する機械学習ベースのアプローチが有用であることが示された。さらに、(Nozawa, Maki et al. Int J Comput Assist Radiol Surg, 2023)では、症候性頚部脊髄症患者の圧迫された脊髄のMRI画像を畳み込みニューラルネットワークを用いてセグメンテーションする手法が提案された。本研究の意義は、radiomicsを用いて脊髄損傷や頚部脊髄症の機能予後を予測することにより、治療戦略や患者のQOL向上に寄与できる可能性があることである。また、人工知能が着目している画像所見を明らかにし、視覚化することで、医師がより客観的な所見に基づいて診断を行うことができる。本研究の重要性は、従来の予後因子と比較して、radiomicsを用いた新しいアプローチにより、より正確な機能予後の予測が可能となり、治療選択やリハビリ計画の策定に役立つことが期待される。総じて、昨年度に実施した研究では、脊髄損傷と頚部脊髄症の機能予後を予測する新しい方法を提案し、その有用性を論文発表を通じて示すことができた。
3: やや遅れている
研究実施計画における各工程の進捗状況は以下の通りである。データの収集と画像のラベリング(令和4年度) 目標のMRI画像500枚の収集が完了していない。これは、協力施設からのデータ提供が予定より遅れていることが主な理由である。現在収集されたデータは300枚で、総数の60%に達している。人工知能モデルの構築と学習(令和4年度) データの収集が遅れていることから、ニューラルネットワークの学習も進んでいない。現状では、収集済みの300枚のデータで学習を進めているが、最終的には全てのデータを用いた学習が必要である。人工知能モデルの検証(令和4年度) データ収集および学習の遅れから、この工程も進行していない。感度、特異度、正確度の評価や従来の予後因子との比較が未実施である。
本研究課題の今後の推進方策と課題に対する対応策は以下の通りである。データ収集の加速 協力施設との連携を強化し、データ提供のスピードアップを図る。また、新たな協力施設を開拓することでデータ収集の範囲を広げ、目標のMRI画像500枚の収集を早急に達成する。学習データの効率的活用 収集済みのデータを用いて、ニューラルネットワークの学習を進める。全てのデータが揃う前でも、可能な限り学習を行い、最終的な学習に向けて準備を進める。時間的制約に対応した研究計画の見直し データ収集の遅れにより、令和4年度に計画していた人工知能モデルの構築・学習および検証が遅れていることを考慮し、研究計画を適切に見直す。具体的には、令和5年度の予定である画像所見の探索についても、できる範囲で進める。本研究課題の進捗状況を改善し、研究目的の達成に向けて努力していく。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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