研究課題/領域番号 |
22K16766
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊村 慶紀 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40772687)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 類上皮肉腫 / INI1 / EZH2阻害剤 / Tazemetostat / 滑膜肉腫 / 淡明細胞肉腫 |
研究開始時の研究の概要 |
類上皮肉腫など種々の肉腫細胞株に対するEZH2阻害剤の抗腫瘍効果を正常細胞と比較し、効果の期待できる組織型を選定、EZH2阻害剤の感受性に関わる遺伝子を探索する。そして、EZH2阻害剤による細胞増殖抑制効果、アポトーシス誘導効果、分化誘導効果を検討する。特に類上皮肉腫においてはINI1の標的遺伝子を網羅的に探索し、その機能解析を行ったうえでEZH2阻害剤投与によりそれらの発現がどう変化するかを検証する。また、転座関連肉腫における融合遺伝子がEZH2の発現とどのように関連しているかを検討し、種々の組織型の臨床検体を用いてEZH2の発現と臨床病理学的因子や予後との相関があるかを調べる。
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研究実績の概要 |
これまでSMARCB1/INI1遺伝子欠失進行性類上皮肉腫症例に対するEZH2阻害剤Tazemetostatの有効性が示されているが、その具体的な抗腫瘍効果の機序やその他の肉腫に対する効果はまだ不明な点が多い。類上皮肉腫はINI1遺伝子の欠失が特徴的とされるが、INI欠失とEZH2の発現やEZH2阻害剤による抗腫瘍効果の関連を調べるために、まず我々はヒト類上皮肉腫細胞株VA-ES-BJにINI1遺伝子を強制発現させたINI1安定発現株VA-INI1を作製した。そのコントロールとしてGFP発現株VA-GFPも同時に作製した。VA-INI1ではVA-GFPに比してin vitroでの細胞増殖能、Sphere形成能が低下し、in vivoでの造腫瘍能が消失した。INI1発現株ではGFP発現株に比してEZH2のみならずc-Myc, E2F, AURKA, PLK1, CDC25C, Cyclin B1といった細胞の増殖や生存等に関わるタンパクの発現が低下し、p21, p27といったsenescence markerの発現が上昇した。VA-ES-BJにおけるINI1欠失によるEZH2発現上昇が示唆され、VA-ES-BJでは正常ヒト線維芽細胞株NHDFに比してEZH2の発現が亢進していた。しかし、VA-ES-BJと当科で樹立したヒト類上皮肉腫細胞株Asra-EPSの2株に対してEZH2阻害剤であるTazemetostatを投与し、WST-8 cell proliferation assayにて細胞増殖抑制効果を検討したが、いずれもIC50が10μM以上とその効果は乏しく、NHDFと同様であった。 また、滑膜肉腫や淡明細胞肉腫にはそれぞれ疾患特異的な融合遺伝子SS18-SSX, EWS-ATF1が存在するが、融合遺伝子の発現とEZH2の発現やEZH2阻害剤による抗腫瘍効果の関連を調べるためにそれら融合遺伝子に対するsiRNAを設計した。各々の融合遺伝子のsilencingによりヒト滑膜肉腫細胞株、淡明細胞肉腫細胞株において細胞増殖能が低下することを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト類上皮肉腫細胞株VA-ES-BJ, Asra-EPSの2株ともにEZH2阻害剤のTazemetostatに対する感受性が乏しく、その機序の解明や滑膜肉腫、淡明細胞肉腫等他のヒト骨軟部肉腫細胞株に対するTazemetostatによる抗腫瘍効果の評価に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
VA-ES-BJにおいてINI1欠失によりEZH2発現上昇が認められるにもかかわらず、ヒト類上皮肉腫細胞株VA-ES-BJ, Asra-EPSに対するEZH2阻害剤Tazemetostatの細胞増殖抑制効果が限局的であるメカニズムを今後解析予定である。 類上皮肉腫のみならず他の骨軟部肉腫細胞株においても、EZH2とその関連遺伝子、タンパク発現を調べる。また、滑膜肉腫や淡明細胞肉腫など他のヒト骨軟部肉腫細胞株へのEZH2阻害剤Tazemetostatの抗腫瘍効果を評価し、その融合遺伝子の発現による変化も検証する予定である。
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