研究課題
若手研究
本研究は治療抵抗膀胱癌におけるエクソソーム中miRNAを起点とした耐性獲得機序を明らかにし、新規治療戦略や診断・予後予測マーカーを開発することが目的である。始めに当科で樹立したゲムシタビン・シスプラチン耐性膀胱癌細胞由来の培養液中エクソソームを用いた機能解析を、in vitroのみならずin vivoにおいて行う。更にシスプラチン耐性膀胱癌細胞由来の培養液中エクソソームを用いたスクリーニング解析を起点として、新たな治療戦略や診断や予後予測マーカーのデータを収集し、最後はヒト臨床検体を用いて治療効果予測を検討する。
現在、臨床的に感度・特異度ともに有用な尿路上皮癌(腎盂尿管癌および膀胱癌)の腫瘍マーカーは無く、患者は放射線被曝を伴うCT検査や侵襲の大きな尿管鏡検査や膀胱鏡検査が一般的に行われている。更に画像検査や内視鏡検査で腫瘍の存在を確認するにはある程度腫瘍が大きくならないと判断できないのが現状である。一方、最近になり細胞外小胞の一つであるエクソソームが細胞間コミュニケーションの担い手として注目されている。エクソソームの中には messenger RNA(mRNA)や microRNA(miRNA)といった核酸やタンパク質などが含まれ、癌においてはその分泌が増加し癌微小環境を構築することが明らかになりつつある。そこで本研究では、エクソソーム含有核酸を用いて尿路上皮癌に対する腫瘍マーカーとなる核酸を検出することを本研究の目的とした。本研究の成果としては、患者由来の膀胱尿路上皮癌(exo1、n=3)、膀胱癌CIS(exo2、n=3)、腎盂尿管尿路上皮癌(exo3、n=3)の血清エクソソーム中RNAを用いてRNAシークエンス解析を行い、正常検体と比較して尿路上皮癌ではエクソソームに含まれる核酸のパターンが大きく異なることを確認した。次に、候補となる核酸の中からLncRNAの一つであるBC200を選び、血清エクソソーム中RNAの発現を調査したところ、尿路上皮癌患者では健常対照と比較して有意に発現が増加していた。さらに、BC200をノックダウンすると、in vitroおよびin vivoで抗腫瘍効果が示された。また、手術後の発現を調査したところ、候補核酸の発現が低下した症例(実線、n=6)は再発を認めなかったのに対し、発現が低下しなかった症例(点線、n=1)は後に転移を認めました。これらの結果をまとめて、現在、論文投稿中である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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