研究課題/領域番号 |
22K16795
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
長屋 直哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10795024)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | PSMA / 前立腺癌 / 標的タンパク質分解誘導薬(PROTAC) / 転移性去勢抵抗性前立腺癌 |
研究開始時の研究の概要 |
転移性去勢抵抗性前立腺癌の患者は、抗アンドロゲン薬や化学療法を受けるが予後不良が課題であり、新しい治療法が求められている。申請者らは、去勢抵抗性前立腺癌患者の血中循環腫瘍細胞にPSMA(Prostate Specific Membrane Antigen)が発現していると抗アンドロゲン薬や化学療法を行っても特に予後が悪い傾向を見出した。そこで本研究では、PSMAを標的タンパク質分解誘導薬(PROTAC)で分解する系を用い、抗アンドロゲン薬に対して治療抵抗性をもつ前立腺癌細胞における増殖・浸潤・遊走能へのPSMAの関与を明らかにし、転移性去勢抵抗性前立腺癌の新規治療法開発の基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
転移性前立腺癌、もしくは前立腺切除または放射線治療後に再発した前立腺癌に対しては、アンドロゲン遮断療法(ADT)が第一の治療法である。ADTはアンドロゲン依存性腫瘍に対して有効であるが、患者の約10-20%がADTに耐性を示し、去勢抵抗性前立腺癌となる。これらの患者に対してアンドロゲン受容体経路を阻害する薬剤及び、CYP17A1阻害剤、タキサン系の化学療法が使用可能である。多くの治療法にもかかわらず、依然として転移性去勢抵抗性前立腺癌の予後は不良である。我々の先行研究により、去勢抵抗性前立腺癌患者の血中循環腫瘍細胞(CTC)においてPSMAの発現がある場合には、抗アンドロゲン薬とタキサン系化学療法投与の何れを投与しても予後が悪い事が明らかになっている。PSMAの発現は癌細胞の増殖を反映し、悪性化にも関与すると考えられている。また、PSMAの発現は、アンドロゲン受容体-テストステロン複合体によって抑制され、非結合アンドロゲン受容体によって促進されていると報告されている。したがって、ADTはPSMAの発現を強める方向に働く。PSMAは、ADTによって発現が誘発または促進される可能性があり、去勢抵抗性への進行に主要な役割を果たしていると考えられる。我々はPSMAの発現がどのように抗アンドロゲン治療抵抗性に関わっているのか、その役割を明らかにするために①抗アンドロゲン薬抵抗性の前立腺癌細胞株におけるPSMAの発現、②前立腺癌細胞株においてPSMA遺伝子発現強度が、細胞増殖・浸潤・遊走に与える影響、③タンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)によるPSMA分解の前立腺癌細胞株に対する効果、について研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は以前、CTCおけるPSMAの発現とアンドロゲン受容体標的薬及び化学療法に対する効果との関連を先行研究で解析している。今回新たに症例を追加し、150名のCRPC患者から得られた合計の371血液検体を解析した。CTCは177検体(47.7%)で検出された。CTC陽性検体において、PSMA mRNAの発現は114の検体で確認された。PSMAとアンドロゲン受容体標的薬治療歴との関連を解析したところPSMA陽性患者は、PSMA陰性の患者と比較してアンドロゲン受容体標的薬であるEnzalutamideの使用歴があった(P < 0.05)。この結果からアンドロゲン受容体標的薬の使用がPSMAの発現に関与していることが示唆された。 In vitroの実験においては、ヒト前立腺癌細胞株におけるPSMAの発現量をアンドロゲン依存細胞株と非依存細胞株で比較解析している。またアンドロゲン受容体標的薬に耐性のあるヒト前立腺癌細胞株をすでに樹立しており、アンドロゲン受容体標的薬がPSMAの発現に与える影響を解析している。
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今後の研究の推進方策 |
血中循環腫瘍細胞におけるPSMAの発現とアンドロゲン受容体標的薬使用との関連を解析した結果は、以前の報告と同様に、アンドロゲン受容体を阻害することでPSMAの発現が増強することが示唆された。実際の患者における今回の結果を、さらにin vitroの実験において確認し、PSMAとアンドロゲン受容体標的薬との関係を明らかにしていく。さらに、PTEN遺伝子機能不全は、PSMAのIP3K-AKT-mTOR経路を介する腫瘍増殖を促進させると報告がある。PSMAの発現を、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を介してノックダウン、またはプラスミドをトランスフェクションすることで増強させ、増殖、浸潤、遊走能、及びIP3K-AKT-mTOR経路活性にどのような影響を与えるのかを解析していく。本研究においては、PSMAをPROTACで分解する系を用い、抗アンドロゲン薬に対して治療抵抗性をもつ前立腺癌細胞における増殖・浸潤・遊走能へのPSMAの関与を明らかにすることも目的としており、PSMAに対する効果的なPROTAC開発も進めていく。
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