研究課題/領域番号 |
22K16846
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
脇本 裕 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20771215)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 人工卵巣 / 卵巣移植 / 再生医学 / 脱細胞化 / 再細胞化 / 卵巣凍結 |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣凍結は若年がん女性の妊孕性温存に応用され、融解移植後の生児獲得が報告されている。しかし、がん転移により凍結卵巣内に微小残存病変が存在する場合、移植により原疾患再発の可能性がある。そこで、再発回避のために、移植可能な人工的なマトリックスに単離した卵胞を導入して人工卵巣を作成し、移植する方法が提案されている。アルギン酸やフィブリンのような人工的な材料を用いて自然の臓器を模倣した人工卵巣が開発されている。一方で、ヒト卵巣組織を脱細胞化することで、微小残存病変を除去した人工卵巣が作成できることが報告された。本研究では、脱細胞化したヒト卵巣組織にマウス卵胞を導入してマウスに移植し、発生能を調べる。
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研究実績の概要 |
9週齢ICRマウスの卵巣組織を0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:sodium dodecyl sulfate)を含むPBS内で24時間浸漬し、さらに40 unit/mlで30分間DNase処理(1mg/mL)を加えて24時間PBSで洗浄することで脱細胞化した。次いで、卵巣組織再構築のために7日齢B6D2F1マウスの卵巣組織から顕微鏡鏡下に31Gの針を用いて組織から単離して卵胞を回収し、組織自動細切機で作成した脱細胞化組織を細切して挟んだ後、①20μLのマトリジェルで覆うか、②アルギン酸ナトリウムの水溶液にCaイオンを加えて、イオン架橋によりゲル化させて卵巣組織を再構築した。 ①か②で作成した再構築卵巣組織をSCIDマウスの卵巣を一部切除のうえ同部位に移植した。B6D2F1由来の産仔が誕生するか確認するため、9週齢被移植SCIDマウスは、移植後2日目に排卵誘発を行い、その2日後にICR♂と交配し、腟栓を確認した。交配後、16日目にマウスの子宮と両側付属器を摘出し、産仔を確認した。コントロールのSCIDマウス由来の産仔を獲得できたが、再構築した卵巣由来のマウス(B6D2F1マウス)は得られなかった。 更に我々は同系のマウスを用いて実験を実施した。単離卵胞にGreen mouse C57BL/6 Tg-CAG-EGFP(GFPマウス)を用いて、そして卵巣の再構築に用いる系統は、脱細胞化に[ICR]、被移植マウスをB6D2F1マウスとした。上記と同様の実験を実施し、交配用♂の系統は[ICR]とし、被移植マウスに移植2日後の排卵誘発のうえ交配し、移植16日目に帝王切開を実施したが、産仔が得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の達成目標は、単離したマウス卵胞をヒト脱細胞化卵巣組織に導入して人工卵巣を作成し、それをマウスに移植して産仔を得ることである。今年度は、マウス卵巣を脱細胞化して用いた実験で産仔が得られるか確認中である。この1年間の動物実験は、前年に引き続き様々なメソッドで試行錯誤のうえ実験を行ってきたが産仔を得るに至っていない。 単離したドナーマウスの卵胞と脱細胞化した卵巣組織からなる人工卵巣の再構築は、当初の予定よりも実験方法の確立に時間を要し、また、マウスへの再構築人工卵巣の移植手技自体も熟練を要し、今後も改善すべき課題と考える。 被移植マウスへの生着の確認のため、同系のマウスを用いて実験を実施し、単離卵胞にGreen mouse C57BL/6 Tg-CAG-EGFP(GFPマウス)を用いて、被移植マウスをB6D2F1マウスとした。7日齢のGFPマウスの摘出卵巣から原因は明らかではないが、卵胞が存在せず単離できなかった。このため、移植した脱細胞化卵巣組織が生着しているか確認が不十分なままである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、導入した卵胞が移植後に時間経過と共にアポトーシスしていくことを懸念して、被移植マウスの排卵誘発の時期を早めの移植2日後に実施してきた。しかし、諸家の報告ではマウス卵巣組織の正所性移植において、移植後2-3週間後に排卵誘発を実施している。したがって、残存卵巣組織からのコントロールしか産仔が得られなかったのは、排卵誘発時期が早期で被移植卵巣の生着と機能回復が未だった可能性が考えられる。今後の研究の推進方策として、排卵誘発の適切な時期を決定する予定である。 なお、既報において腎被膜下に行われた卵巣の異所性移植において、移植後2-3週間に回収された組織の卵胞の回復率は26-32.5%とされる。したがって、移植マウスの最適な排卵誘発の時期は移植後約2-4週後と想定される。なお、マウスへの再構築人工卵巣の正所性移植手技自体は熟練を要する技術であるため、比較的実質が容易な腎被膜下への異所性移植を予定する。これにより、正所性移植においては残存卵巣からの排卵の可能性も否定できなかったが、再構築人工卵巣を腎被膜下に異所移植することで、再構築卵巣組織の機能回復の検討が可能と考える。
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