研究課題/領域番号 |
22K16892
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
工藤 直美 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (30770143)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 好酸球性中耳炎 / 上皮性サイトカイン / パパイン / 自然免疫 / 2型自然リンパ球 / 樹状細胞 / マクロファージ |
研究開始時の研究の概要 |
好酸球性中耳炎は、およそ半数の症例で内耳性難聴をきたし、6%が不可逆的な重度難聴に至るとされ、患者の生活の質(Quality of life: QOL)を損なう。このような重症化の背景にはステロイド抵抗性や難治性という問題があると考えられるがその病態に関してはいまだに不明な点が多い。 申請者らはこれまで、好酸球性中耳炎モデル動物を用いた免疫組織学的研究を継続して行っており、特に炎症の長期化に伴う内耳の形態学的変化についても確認している。本研究では、動物モデルを用いて、内耳障害や難治化に関わる病態解明を目指す。
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研究実績の概要 |
プロテアーゼ刺激を利用した新規動物モデルの作成に取り組んだ。当初真菌プロテアーゼを用いることを想定していたが、文献上は植物性プロテアーゼであるパパインを用いて喘息モデルや好酸球性副鼻腔炎モデルを作成したという報告があった。好酸球性中耳炎モデルを作成するにあたっても、中耳刺激のためのプロテアーゼの至適投与量を考えるうえで参考にできる部分が多かったこともあり、今年度はパパインを用いたモデル動物作成を行う方針とした。 ハートレー系モルモットの中耳腔にPBSで希釈したパパイン溶液を、経鼓膜的に投与するという方法でモデル動物を作成した。刺激の期間は12日間連続とし、最終投与から24時間以内に側頭骨を摘出し、標本を作製した。観察した結果、パパインの刺激を行った群では耳管鼓室口付近に好酸球を多数含む貯留物が観察され、その内部には脱落した杯細胞や呼吸上皮と思われるものも含まれていた。また、中耳粘膜上皮の直下にも好酸球の浸潤を認め、杯細胞の過形成も認められた。 本研究は抗原非特異的な自然免疫系の反応を利用してモデル動物を作成する試みであり、このモデルから採取した中耳粘膜における2型自然リンパ球(ILC2)の探索も行った。ILC2は自然免疫反応においてTh2サイトカインの放出を促す役割を持ち、気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎においてもその存在が報告されている。本研究ではILC2の表面に発現するマーカーの内、STR2、CRTH2、CD25の三種を蛍光免疫染色により検討し、これらを共発現する細胞をILC2と考えて探索したところ、パパイン刺激モデルにおいてこのような細胞が優位に増加していることが判明した。 上記の方法で得られた好酸球性中耳炎モデル動物は、これまで行われていた卵白アルブミンの特異的抗原刺激を用いた方法よりも簡便であり、今後の病態研究に有用と考えらえる。現在英文誌への投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで好酸球性中耳炎のモデル動物を作成するために用いられていた方法は、卵白アルブミンの抗原特異的反応であった。これはあらかじめ卵白アルブミンを全身投与して、全身感作を行ったうえで、卵白アルブミンを連日鼓室内に投与するという方法であった。そのためモデル動物の作成に2ヶ月ほどの期間を要するものであり、煩雑な方法であった。また近年、気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎の発症には真菌、黄色ブドウ球菌の外毒素などプロテアーゼ刺激による抗原非特異的な、自然免疫系を介した反応が関与していると考えられる報告が相次いでいる。 よって、モデル動物の作成法の簡便化を図るとともに、より生理的な病態に近い動物モデルを作成することは、今後の好酸球性中耳炎の病態解明に有用なものであると考えられる。本研究においてはパパインの刺激を用いてモデル動物を作成したが、これにより中耳粘膜への好酸球遊走を確認し、モデル動物の作成法としてより簡便な方法を確立できたと思われる。さらに、組織学的にも杯細胞過形成やムチンの増生などの変化を確認できている。このモデルにおいてILC2の存在を示唆する所見が得られたことも重要な所見であると考えらえる。 以上のことから、好酸球性中耳炎の新規モデル作成、そこに関わる自然免疫系の関与に関する研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今回行った好酸球性中耳炎モデル動物の作成法をより安定して行うための手技の確立に取り組んでいきたい。最終的にはマウスを用いたモデル作成を行うことが目標である。それによりさらに信頼性の高い研究成果が得られると考えている。また本モデルを用いた病態研究に関しても、M2マクロファージなどの自然免疫系に関わる他の因子、好酸球性ムチンの増加と上皮性サイトカインの発現の相関関係などに着目しながら、さらに研究を進めていきたいと考えている。 本研究の中心となる学術的な問いとして好酸球性中耳炎の難治化に関与するメカニズムの解明があるが、実臨床に照らして考えるならば、これは内耳障害の発生に深くかかわる問題であると捉えなおすことができる。今後研究を進めていくうえで、中耳で起こっている形態学的な変化が、内耳の傷害に関わっていく過程を明らかにしたいと考えている。そのためには、中耳粘膜で起こっている変化、およびそこに発現している炎症細胞やサイトカインなどのさまざまな関連因子と、内耳の変化の相関関係に着目することが必要と考えられ、今回作成したモデル動物を用いてさらに研究を深めていく考えである。
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