研究課題/領域番号 |
22K16900
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
津田 潤子 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90777187)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | 糖尿病 / 内耳蝸牛 / 最小血管障害 / NMN / ABR / TSODマウス / C57BL/6マウス / 2型糖尿病モデルマウス / 老人性難聴モデルマウス / 感音難聴 / 聴性脳幹反応 / ニコチンアミドモノヌクレオチド / 内耳 / アンチエイジング |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病患者数は生活習慣の変化に伴って増加している。糖尿病は網膜症・腎症・神経障害等の合併症を伴うことが課題であるが、これまで糖尿病性難聴に対する研究は十分に行われていない。糖尿病性難聴は、若年から発症し、会話に必要な低中音域が障害されるため、QOLを著しく低下させる。糖尿病性難聴に着目しモデルマウスであるTSODマウスを用いて、蝸牛における血管障害が糖尿病性難聴に関与することを見出した。本研究は、TSODマウスを用いて、近年糖尿病への有効性が示されたニコチンアミド(NMN)の糖尿病性難聴に対する治療効果を確認するとともに、作用機序の解明を試みる。
|
研究実績の概要 |
【はじめに】我々は2型糖尿病マウスTSODの加齢に伴う難聴と予防法を検討してきた。TSODマウスは加齢に伴い早期から聴力低下をきたし、蝸牛血管条毛細血管面積の減少を認め、これは内耳における細小血管障害と考えている。【目的】今回は酸化還元反応の中心的役割を担うNMNに注目し、聴覚に対する効果を検討した。NMNはC57BL/6マウスに対する12か月投与による抗加齢効果や、境界型糖尿病患者に対する10週間投与による骨格筋インスリン感受性改善効果が報告されている。【方法】TSODマウス、C57BL/6マウスを各々コントロール群、NMN投与群(100mg/kg/日)に分けて飼育した。聴覚評価として,8・16・32kHzの3周波数刺激で聴性脳幹反応(ABR)検査を経時的に行った。また、体重測定を経時的に行い、HbA1c値等の血液生化学検査を施行した。側頭骨を摘出し内耳蝸牛の組織学的検討を行った。【結果】TSODマウスはNMN投与群で体重抑制を認めたが、ABRに両群で差はなかった。またHbA1c値も両群ともに高値を示した。C57BL/6マウスでは28週齢16kHzでNMN投与群のABR閾値を有意に抑制したがそれ以降は有意差を認めなかった。32kHzも同様だった。【考察】NMNはTSODの聴覚に明らかな有効性が得られず、またC57BL/6マウスに対しても閾値上昇を抑制する傾向にあったが有意ではなく、投与量等さらなる検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、TSODマウス、C57BL/6マウスを用いた実験として、経時的な聴覚評価である聴性脳幹反応(ABR)検査、体重測定、HbA1c値等の血液生化学検査についてすべて施行できた。測定が終了したため、側頭骨を摘出し内耳蝸牛の組織学的検討を行い、予定していた研究については終了できた。結果を全国学会で発表し、他施設の研究者と討論を行い、アドバイスを頂いた。
|
今後の研究の推進方策 |
糖尿病やアルツハイマー病など老化関連疾患に重要な役割を果たすNAD +の中間代謝産物 NMNを用いて、加齢に伴う聴力低下への効果を検討した。糖尿病モデルTSODマウスでは、聴力低下に対する効果を確認できなかった。投与量・期間の検討も残されるが、NMN投与下であっても重度の糖尿病を発症していることから、NMN投与のみでは抑制できない可能性が示唆された。一方、老人性難聴モデルC57BL/6マウスでは、顕著な差ではなかったものの加齢に伴う聴力低下を抑制する傾向にあり、さらに投与量や飼育条件を変更し、検討をすすめていく予定である。
|