研究実績の概要 |
ヒト喉頭は発声・気道・嚥下に関わる臓器であり、中でも声帯は発声に重要であり複雑な構造をもつ。これまで声帯の微細構造について様々なアプローチによる研究がなされていたが、組織から微細構造の関連付け、また微細構造の観察方法などに課題があり、不明な点も少なくなかった。 今回の研究では、最新の電子顕微鏡技術である光電子相関顕微鏡法(CLEM法)を用いてヒト声帯の微細構造について解明した。組織標本の関心領域から微細構造を観察する本手法を用いて、喉頭の複雑な構造が故に観察が困難であった各組織との移行部の微細構造を解明した。特にこれまで報告してきた、声帯の層構造や声帯黄斑の微小環境、細胞と細胞外マトリックスについて、組織標本を基に微細構造を解明することができた(Sato K, et al. Laryngoscope Investig Otolaryngol, 2022)。 また、ヒト声帯の正常微細構造のみならず、声帯疾患の一つであるラインケ浮腫についても検討し、ラインケ浮腫の病態として低酸素誘導因子(HIF-1)との関与と、更に疾患に伴う毛細血管の微細構造をCLEM法により解明した(Sato K, et al. Laryngoscope, 2024)。 本研究は、声帯の微細構造に対する既存の観察方法を組織レベルから微細構造へと還元することにより、新たな研究手法としてのモデルを確立した。 本研究モデルは今後、様々な疾患に対して外科的切除された組織標本のみならず、疾患モデルを用いた動物実験など様々な研究への応用が期待される。
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