研究課題/領域番号 |
22K16914
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中村 雄 宮崎大学, 医学部, 講師 (50750931)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 一側聾 / 片側性難聴 / 方向感 / ハプティックデバイス / 音源定位 / 触覚刺激 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究プロジェクトでは、音源定位が困難となる一側聾の患者に対し触覚刺激による方向感サポートを行うためのハプティックデバイスの開発を行う。ハプティックデバイスの具体的機能としては、話声あるいは車などの危険物の接近をマイクロフォンで認識し、その刺激音がどの方向から来たかを多チャンネル化した振動端子で患者に提示するというシステムを想定している。骨導補聴器による聴取成績の改善に加え、新規開発ハプティックデバイスによる音源定位の改善を行うことで、一側聾患者の包括的治療法開発を行うことを目指す。
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研究実績の概要 |
東東京理科大学 朝倉研究室および東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科の協力を得て継続している研究計画において、後述する通り研究は計画通り進行している。“ハプティックデバイスにより音源定位がサポート可能か”というテーマのproof of conceptをより強固にするための実験を進行中である。さらに、音源定位をサポートするための手段としてハプティック刺激以外の方法も検討を行っている。 被験者の正面にノイズ提示スピーカー、左右にシグナル提示スピーカーを設置し、左右のシグナル提示スピーカーのどちらかからランダムに純音を提示し、左右どちらのスピーカーから聞こえた音であるかを回答してもらうという実験系を確立した。ヘッドマウント型のハプティックデバイスを用いて、デバイス装着の有無により正答率が変化するかを検証した。被験者には耳栓およびイヤマフを装着してもらい“片側難聴モデル”“両側難聴モデル”として解析を行った。耳の遮蔽なしの条件では、最も聞き取り困難な状況である40dB SPLのシグナル提示でも100%の正答率が得られた。一方、耳栓及びイヤマフを用いて(40dB HL程度の閾値上昇を想定)片耳難聴、および両耳難聴を擬似的に作成したところ、片耳難聴および両耳難聴では正答率がシグナルの音圧の低下に伴い低下するという結果が得られた。そして、片側難聴モデル、両側難聴モデルにハプティックデバイスを装着すると、その正答率は有意に改善した。以上より、ハプティックデバイス補助により左右180°の弁別は可能と考えられた。刺激部位及び刺激周波数としては現状では、頸部に低周波数での刺激が望ましいと考えられた。一方で、ハプティック刺激は場合により、音刺激との混同が生じる可能性があり、そのほかの刺激方法も検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までは、研究のコンセプトを証明することに成功し、進捗状況としては予定通りだと言える。しかし、「異なる音源定位補助方法の検証」も研究テーマとして新たに興り、プロジェクトの継続が望ましい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
一側聾患者のQOLを最大限に補助するための方策として“骨導補聴器による難聴側からの音入力の補助+ハプティックデバイス(あるいはその他の刺激)による方向感の補助”は有力な候補の一つであると考えられる。本研究により得られる知見は、一側聾の患者に限らず、方向感が欠如する病態(片側人工内耳埋め込み患者など)全ての治療に活用が期待されるものである。今後、本デバイスを補聴デバイスと同時に使用していくこと、多チャンネル化し、3次元的な方向感を出すことを目的とした最適化を行っていく。加えて、その評価系も含めた開発を行っていく予定である。評価系の確立に際しては、宮崎大学での臨床データから評価に適する検査方法の抽出および、実際の骨導補聴器の聴覚に与える影響を解析するために2つの後方視的研究を行った。その結果を以下2報の学術論文にまとめた。 ハプティック刺激の最適化に加え、その他の刺激方法との比較が研究テーマとして挙げられる。振動デバイスの設置位置に関する検討では、側頭骨にデバイスを装着した際はデバイス振動によりスピーカーの音がマスクされるという意見が得られた(個人差はあるが100Hz~150Hz以上の振動で音として感じ始める)ためである。他の刺激方法としては、電気刺激療法(EMS)でも利用される電気刺激、あるいは視覚刺激の付加などを検討している。
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