研究課題/領域番号 |
22K16923
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 正宣 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70455658)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 好酸球性副鼻腔炎 / 慢性副鼻腔炎 / 鼻ポリープ / コラーゲン |
研究開始時の研究の概要 |
好酸球性副鼻腔炎の臨床上の最大の特徴である鼻ポリープでは、支持組織であるコラーゲンが減少していることが明らかになっている。しかし現在までに、Type2炎症がこの発現制御にどのように関連しているかは不明である。 そこで、本研究では、Type2炎症がコラーゲン発現に与える影響を検討するために、鼻粘膜由来の細胞でシグナル伝達やサイトカインなどを評価する。コラーゲン発現を制御する細胞内の亜鉛の変化をZinquin法による偏光顕微鏡検査で評価する。またTissue micro arrayで、Type2サイトカインの発現を評価し、亜鉛やコラーゲン発現との相関や臨床情報との関連を検討する。
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研究実績の概要 |
Type2炎症による鼻粘膜支持組織への影響 近年、難治性副鼻腔炎は増加傾向にある。中でも鼻茸を伴う副鼻腔炎 (Chronic rhinosinusitis with nasal polyps; CRSwNP 好酸球性副鼻腔炎の多くの症例がこれに該当する。ヨーロッパの最新のガイドラインEPOS2020ではPrimary, diffuse, Type2, CRSに分類される)に対して治療戦略上のブレイクスルーが期待されている。その病態はA. 鼻粘膜上皮のバリア機能の低下を背景としたTSLPやインターロイキン33等のサイトカイン産生亢進を契機に、B. Th2優位の免疫応答(Type2炎症)が生じ、その結果として、 C. リモデリングが生じフィブリン網形成やコラーゲンの低下による浮腫が遷延し、鼻茸が形成されると考えられている。好酸球性副鼻腔炎の臨床上の最大の特徴である鼻ポリープでは、支持組織であるコラーゲンが減少していることが明らかになっている。しかし現在までに、Type2炎症がこの発現制御にどのように関連しているかの詳細は不明である。そこで、本研究では、上皮細胞から始まるType2炎症カスケードがコラーゲン発現に与える影響を検討し、その制御因子を同定することを目的としている。 これまでに鼻粘膜組織から採取した鼻粘膜上皮細胞や線維芽細胞などの培養を開始しており、特に上皮細胞は気液界面の培養も行っている。また、副鼻腔炎の各サブタイプを含むTissue Micro Array (TMA)の作製を開始した。TMAがあれば、各種サイトカインやフィブリン網、コラーゲンやその制御因子の発現を免疫染色法で均一な条件のもとに検討できる。偏光顕微鏡を用いれば半定量化することもできる。TMAは健常例(鼻中隔手術や頭蓋底手術)を含む全50例を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに実験系で中心的な役割を占めるPrimary cellsの培養の最適化に成功している。各薬剤の投与タイミングや至適投与量の検討も終わっている。気液界面の培養(Air Liquid Interface (ALI) 培養)も行っており、バリア機能の評価にも成功している。線維芽細胞におけるコラーゲン発現の評価も、Ligandやその投与方法の特定や、Sirius red染色やqPCR法、ELISA法などの条件設定が終了し、今後、実際の症例由来の検体を無駄なく検討に回せる環境が整いつつある。 またコロナ禍で症例数が一時的に減ったものの、その後回復の兆しを認めており、今後多数の症例から得たサンプルを実験系に回すことができると考えられる。これらの臨床検体は好酸球浸潤数、CTスコア、ポリープスコア、呼吸機能、予後などの臨床情報が網羅的にデータベース化されており、効率的に基礎実験の結果と照合することができる環境が整いつつある。本研究においては、臨床検体数が研究の律速になるため、今後も症例の蓄積に力を注いでいきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
鼻粘膜組織から採取した鼻粘膜上皮細胞や線維芽細胞を培養し、各薬剤を投与、その影響を評価する。具体的には鼻粘膜上皮細胞には自然免疫リガンドの投与やS.aureusを感染させ、上皮由来のサイトカインの発現を評価する。線維芽細胞にはアスコルビン酸とともにType2サイトカインを投与し、アスコルビン酸によって誘導されるコラーゲン発現へのType2サイトカインの影響をqPCR法、免疫染色法、Westernbloting法、ELISA法で評価し、Wound healing assayで増殖能も検討する。Type2サイトカインによるコラーゲン発現の変化が確認された場合、抗IL-4/IL-13抗体を含む各種薬剤との共培養で線維芽細胞におけるコラーゲン発現の変化を検討する。 また、副鼻腔炎の各サブタイプを含むTissue Micro Array (TMA)の作製も進めていき、症例が蓄積次第、各種サイトカインやフィブリン網、コラーゲンやその制御因子の発現を免疫染色法で均一な条件のもとに検討する。偏光顕微鏡を用いれば半定量化する。 さらに、抗IL-4とIL-13抗体などを使用した症例のうち、投与前後での鼻粘膜検体が存在するものについては、コラーゲン発現やその上流であるTGF-bシグナルの各因子の発現を免疫染色法やqPCR法、Western blotting法で比較検討する。好酸球浸潤数、CTスコア、ポリープスコア、呼吸機能、予後などの臨床情報との関連を検討し、臨床的意義を探索する。
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