研究課題/領域番号 |
22K16960
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
清井 武志 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70527522)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | S-1 / 角膜神経 / 神経炎症 / 感覚異常 / がん薬物療法副作用 / 角膜上皮障害 / TRPチャネル |
研究開始時の研究の概要 |
がん薬物療法の副作用として、流涙、視力低下、羞明、角結膜炎、角膜潰瘍など様々な眼症状が知られているが、それら眼症状の発生メカニズムについては理解が進んでいない。また近年、侵害受容器TRPチャネルを介した角膜神経の応答異常が、眼痛、不快感、涙液基礎分泌や炎症を伴う上皮障害の進展に関与することに関心が高まっている。そこで本研究は、抗悪性腫瘍薬であるテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)の実験動物を用いた投与試験により、侵害受容器(TRPV1、TRPM8)の生理活性変化を介した角膜神経の興奮異常が種々の眼症状に関与するのかを明らかにし、がん薬物療法の副作用緩和に資する研究を行う。
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研究実績の概要 |
令和4年度に引き続き、S-1投与ラットにおける涙液基礎分泌量、フルオレセイン染色による角膜上皮障害スコア、自発瞬目回数等の基礎データを集積した。点眼投与による高浸透圧刺激(5 M NaCl)、および主に冷感受性神経に発現するTRPM8のアゴニストであるメントール(5 M)刺激に対する瞬目行動を新たに調査したが、S-1群とVehicle群とでは差を認めなかった。また、有意な差を認めなかったが、0.008gフィラメントを用いた眼表面への機械刺激に対し、S-1投与群では鈍麻を生じる傾向がみられた。 角膜ホールマウント試料を用いて抗Tubulin βⅢおよび抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)免疫染色を実施し、S-1投与期間中の角膜神経線維の密度変化を経時的に解析した。その結果、眼表面において多くのポリモダル神経に発現するとされるCGRPを含有するペプチド性の角膜神経線維の密度が、S-1投与開始から1週経過後より増加した。一方で、S-1が三叉神経節に及ぼす経時的な影響も調査し、S-1投与開始から4週経過後にIba1陽性ミクログリアの細胞数増加と肥大化が顕著に表れた。 S-1がん化学療法では、ペプチド性感覚神経を含む角膜神経線維の密度増加と、Iba1陽性ミクログリアの活性化を主体とした三叉神経節の神経炎症を伴う神経活動の変調が、副作用として生じる眼症状に関与する可能性が示唆された。これらの形態学的変化がどのような過程で生じ、さらには角膜神経活動にどのような影響を与えているのかを明らかにするため、三叉神経節の時系列トランスクリプトーム解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎データを集積すると共に、眼表面への各種刺激に対する瞬目行動を解析し、S-1投与群では知覚異常が生じる可能性を見出した。また、角膜神経線維および三叉神経節において、S-1投与開始からの経時的な組織学的変化をに明らかにした。これらの結果をもとにサンプリングのタイミングを見極めたうえ、現在は三叉神経節組織のトランスクリプトーム解析(RNA-seq)を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、三叉神経節のトランスクリプトーム解析を進めており、特にイオンチャネルを介した角膜神経の興奮に関連する遺伝子の発現変動に注目している。解析結果を参考にしながら電気生理学的実験を実施し、角膜神経初代培養細胞ならびに末梢の角膜神経線維が、どのような刺激に対してどの程度の興奮異常を生じるのかを検討する。これにより、S-1がん化学療法時に問題となる眼症状の新たな副作用機序を考察する。
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