研究課題/領域番号 |
22K16965
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺島 浩子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90721720)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 血管新生緑内障(NVG) / 虹彩新生血管(NVI) / 増殖糖尿病網膜症(PDR) / 光干渉断層血管造影(OCTA) / 前眼部OCTA / 増殖糖尿病網膜症(PDR) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、増殖糖尿病網膜症(PDR)および血管新生緑内障(NVG)に対する前眼部光干渉断層血管造影(OCTA)を用いた非侵襲的虹彩新生血管(NVI)評価の臨床応用の確立である。
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研究実績の概要 |
本研究の当該年度の成果は、前眼部光干渉断層血管造影(OCTA)を用いた非侵襲的な新しい虹彩新生血管(NVI)の評価方法を確立したことである。従来のNVIの評価方法は、細隙灯顕微鏡や隅角鏡を用いる方法が簡便で一般的だが、初期のNVIを捉えることや微細な変化の観察はしばしば困難であり見逃されやすい。また、より検出に優れたフルオレセイン蛍光眼底造影を用いる方法もあるが、侵襲的な検査であるため頻回な検査で経時的変化を捉えることが困難であり、新しい検査方法が求められている。本研究では、血管新生緑内障(NVG)を合併し得る増殖糖尿病網膜症や網膜中心静脈閉塞症等の虚血性網膜疾患の、手術治療や抗VEGF(血管内皮増殖因子)薬治療前後の虹彩を前眼部OCTAを用いて評価した。 術前後の評価では、増殖糖尿病網膜症の21眼と網膜中心静脈閉塞症の3眼の術前後を撮影し、術後は症例により1カ月から11カ月の間撮影を繰り返した。 抗VEGF薬治療前後の評価では、増殖糖尿病網膜症の9眼と網膜中心静脈閉塞症の3眼の術前後を撮影し、治療後は症例により1週間から半年の間撮影を繰り返した。 検査機器は、10°前眼部用光学アダプターレンズを装着したSS-OCT:PLEX Elite 9000を使用し、瞳孔領を含む6mm×6mmの範囲を撮影した。評価にあたり、前眼部OCTAによるNVIの定性分類を新たに作り、得られた全ての画像を分類し、細隙灯所見や隅角所見、眼圧と比較した。結果、臨床所見でNVIがある症例の全例で前眼部OCTAでもNVIの所見が得られ、細隙灯所見や隅角所見でNVIの無い場合でもNVIが存在する症例があった。治療経過で定性分類が変化していく症例があることも明らかとなった。 今後症例数が蓄積されることで、定性分類と臨床所見や眼圧の関連が明らかとなり、NVGの早期発見や適切な治療介入に大きく貢献すると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、難治性でかつ失明に直結し得るNVGの早期発見や適切な治療介入への貢献である。前眼部OCTAは、非侵襲的に経時的な虹彩血管の評価が可能という点で臨床応用が期待されているが未だ実用化には至っておらず、評価方法等を提示した報告が少ない。当該年度は、前眼部OCTAによるNVIの定性分類を定め、臨床所見と比較することで、これまでにない臨床応用への足掛かりを作ることができた。 現時点で、手術前後では、増殖糖尿病網膜症の21眼と網膜中心静脈閉塞症の3眼の術前後を撮影し、抗VEGF薬治療前後では、増殖糖尿病網膜症の9眼と網膜中心静脈閉塞症の3眼の術前後を撮影しており、症例によっては術後11カ月もの長期間毎月前眼部OCTAを撮り続けている。 既に現時点で、NVIの早期発見に有用であったり、治療経過における経時的なNVIの変化を捉えることのできた症例が存在した。今後症例数の蓄積と、各症例の前眼部OCTA評価の期間が延びることによって、前眼部OCTAの定性分類と臨床所見や眼圧の関連が明らかになると考えられ、結果的に前眼部OCTAモニタリングによるNVG管理の更なる有用性を示すことに繋がると期待ができる。以上から、本研究の当該年度の進捗状況としてはおおむね順調と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、NVGを合併し得る増殖糖尿病網膜症や網膜中心静脈閉塞症等の虚血性網膜疾患の、手術治療や抗VEGF薬治療前後の虹彩の前眼部OCTA撮影の症例数や期間を増やすことが必要である。理由は、NVGの早期発見に前眼部OCTAが有用であることをより検証する必要があること、前眼部OCTAで発見されるNVIの臨床的意義を検討する必要があること、当該年度のみの症例数と期間では、前眼部OCTAによるNVIの定性分類と臨床所見や眼圧等のパラメーターの関係を明らかにできていないからである。結果次第では、今回新たに作った定性分類をより臨床応用に有用な分類に作り変えることも必要と考える。 第二に、NVGに対して線維柱帯切除術やチューブシャント術等の緑内障手術を施行した患者で、毎月の前眼部OCTAモニタリングに基づいた積極的抗VEGF薬治療を施行し、術後12カ月時点での臨床所見や各種パラメーターを解析し術後成績を評価することを目標とする。各種パラメーターとして、眼圧だけではなく、中心窩網膜厚や黄斑部血管密度、黄斑中心窩無血管野面積等を想定している。 第一と第二の方策を経ることで、前眼部OCTAによるNVG管理の有用性を明らかにできれば、NVGの診療において期待されている非侵襲的で見逃しの少ない新しいアプローチに繋がると考える。
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