研究課題/領域番号 |
22K17008
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
岩本 莉奈 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 助教 (20907216)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 血管内皮細胞 / 骨 / 細胞老化 / RANK / Wnt / Endothelial cell / bone metabolism / Vessel |
研究開始時の研究の概要 |
骨量は骨に存在する様々な細胞が相互作用することにより厳密に調節されており、このバランスが乱れることで骨粗鬆症が発症する。近年成長期に存在する血管が骨代謝を制御することが報告され、血管と骨代謝との関連が注目されている。しかし、血管による骨代謝調節の分子機構は明らかではない。申請者は、血管内皮細胞が発現するRANK及びWntリガンドに着目をし、骨代謝への寄与を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
我々は、マウス骨髄におけるReceptor activator of NF-κB (RANK)発現細胞の系譜解析から、血管内皮細胞がRANKを発現し、さらに加齢に伴いRANK発現血管内皮細胞の割合が増加することを見出した。そこで、血管内皮細胞特異的RANK欠損 (EC-RANK cKO)マウスを作出し、μCT解析を行ったところ、8-24週齢EC-RANK cKOマウス骨量はcontrolマウスと比較して変化が見られなかった。一方で32週齢EC-RANK cKOマウス骨量が有意に増加していることが明らかになった。また、32週齢EC-RANK cKOマウスの骨形態計測を行ったところ、破骨細胞数には変化は見られなかったものの、骨芽細胞数が有意に増加していることが明らかになった。続いて、EC-RANK cKOマウスの加齢との関連を明らかにするためにSA-β-gal染色を行ったところ、32週齢EC-RANK cKOマウスにおいてSA-β-gal陽性老化細胞が有意に減少していることが明らかになり、血管内皮細胞RANKが加齢性骨量減少及び骨髄細胞の老化に関与していることが示唆された。 血管内皮細胞Wntの骨への影響を調べるために、血管内皮細胞でWntリガンドを分泌できなくなる血管内皮細胞特異的Wls欠損 (EC-Wls KO)マウスの作出を試みたところ、EC-Wls KOマウスは出生しなかったためEC-Wls hetero KOマウスで解析を行った。その結果、10週齢EC-Wls hetero KOマウスのμCT解析を行ったところ、controlマウスと比較して有意に増加しており、骨形態計測により骨芽細胞の有意な増加が明らかになった。これらの結果はEC分泌Wntリガンドが骨量を負に調節していることが示しており、どのWntリガンドがその役割を担っているか今後明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに血管内皮細胞RANKが加齢性骨量減少及び骨髄細胞の老化に関与すること、血管内皮細胞分泌Wntが骨量減少に関与することを明らかにした。血管内皮細胞RANKが骨代謝にだけではなく、骨髄の細胞老化に関与しているかについては当初の仮説にはなかったことだが、週齢に伴ってRANK陽性血管内皮細胞が増えること、乳腺上皮細胞においてRANKLシグナルは細胞老化を促進するという過去の知見から細胞老化に着目をして、今回血管内皮細胞RANKが骨髄細胞を老化させることを明らかにすることができた。また、血管内皮細胞Wntが骨量を負に制御していることを明らかにした。今まで報告されていた細胞特異的Wls欠損マウスの解析では、骨量が減少する表現型のみ報告されていたが、血管内皮細胞Wls hetero KOマウスでは骨量が増加した。これは今まで報告されていなかったWntリガンドの骨量維持における役割を示唆しており、仮説とは異なる結果となったものの、非常に興味深い結果を得ることができた。以上より、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は血管内皮細胞RANKによってどのように骨量が減少するか、骨髄細胞の老化が促進されているか明らかにする。具体的には、RANK陽性血管内皮細胞とRANK陰性血管内皮細胞の液性因子発現の比較を行い、血管内皮細胞RANKLシグナルにより分泌される物質の何が骨形成を抑制し、骨髄老化を促進しているのか見出す。また、血管内皮細胞と、Wntリガンドを豊富に発現している骨髄間質細胞をセルソーターで単離し、Wntリガンド発現を比較することで血管内皮細胞から分泌され、骨量を負に制御するWntリガンドを明らかにする。
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