研究課題
若手研究
象牙質は、象牙芽細胞により形成される。象牙芽細胞が死滅すると、未分化間葉系幹細胞が新たに象牙芽細胞へと分化し、修復象牙質が形成される。他方で、骨芽細胞は骨を形成する細胞である。骨芽細胞の分化には、エネルギー代謝経路の一つである解糖系が重要な役割を果たす。骨芽細胞と象牙芽細胞は、共に硬組織形成細胞であるが、象牙芽細胞の分化における解糖系の重要性は不明である。また、修復象牙質形成には、歯髄の血管新生も関与することが報告されており、血管新生にも解糖系が重要な因子であることが分かっている。そこで本研究では、修復象牙質形成における解糖系の意義を、象牙芽細胞分化、血管新生の二つのアプローチから解明する。
修復象牙質形成を担う象牙芽細胞の分化における解糖系の重要性は不明である。そこで本研究では、マウスの歯に刺激を加え、この時に誘導される修復象牙質形成における解糖系の役割を解析した。結果として、外傷後の修復象牙質を形成する象牙芽細胞で解糖系酵素が高発現しており、同時に血管新生も増加することを確認した。そして、解糖系酵素の阻害薬を投与し、修復象牙質形成を誘導すると、象牙芽細胞の減少に伴う修復象牙質の形成抑制が起こることを確認した。これらの結果から、解糖系およびこれに続くエネルギー代謝経路が修復象牙質形成において重要な働きを示すことが示唆された。
修復象牙質形成時の象牙芽細胞分化において解糖系が関与するかは未解明の状態であった。実際の臨床に則した損傷モデルを用いて修復象牙質形成の誘導実験をおこなったところ、修復象牙質形成における解糖系の重要性が示唆された。そのため、象牙芽細胞における解糖系は治療標的として歯の治療に応用できる可能性がある。具体的には、歯の侵襲時に解糖系を効率的に上昇させることで修復象牙質を誘導し歯を保存させることができ、歯の再生においては、解糖系亢進により象牙芽細胞分化を促し、象牙質形成を効率的に行うことができる。本研究において、象牙芽細胞における解糖系は治療標的であり、歯の保存・再生療法に応用できる可能性が示唆された。
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