研究課題/領域番号 |
22K17025
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
黄地 健仁 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30803564)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 象牙芽細胞 / Pericyte / 小胞体ストレス / 機械感受性イオンチャネル / Piezo1 / NG2 |
研究開始時の研究の概要 |
象牙芽細胞は象牙質形成を駆動するとともに、外部刺激を受容する感覚受容細胞の特徴を持つ。象牙芽細胞増殖の詳細な系譜を解明する事ができれば、歯の保存に向けた象牙質再生治療や歯痛に関するメカニズムの解明への大きな手がかりとなる。本研究では、1. 歯髄血管周囲に存在する周皮細胞(Pericyte)の象牙芽細胞への分化および、2. 象牙質形成機能・感覚受容機能に関して、メカニカルストレス関連分子マーカーPiezo1とYapに着目したシグナル制御機構を明らかにし、新規治療法の開発に向けた基礎研究を実施する。
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研究実績の概要 |
歯髄最外層の象牙芽細胞は、象牙質形成を駆動するとともに、外部刺激を受容する特徴を持つ。我々は機械感受性イオンチャネルPiezo1が象牙芽細胞の機能に重要な役割を担う分子であると報告した(Matsunaga et al., 2021; Ohyama et al., 2022)。象牙細管は周囲を象牙質に、表面をエナメル質に被覆されているが、う蝕や象牙質の摩耗で象牙細管が露出した場合は象牙細管内の静水圧変化を通じて痛みを感知する。このように、象牙芽細胞は象牙質形成細胞と感覚受容細胞としての両方の能力を持ち、周囲の環境により制御されているが、それぞれの機能発揮に携わる環境因子や遺伝子制御、細胞シグナル制御、機能担当のスイッチ機構は不明であった。 近年、象牙芽細胞周辺に位置するPericyteと歯髄血管網が構築する微小環境の存在が報告された(Khatibi Shahidi et al., 2015)。また歯髄は創傷治癒過程で低酸素など様々なストレスにさらされ、小胞体機能低下による小胞体ストレスを生じることが想定される。そこで本研究では、生理的・病理的な歯髄環境での象牙芽細胞とPericyteの特異的分子発現パターンを明らかにする。機械刺激応答と小胞体ストレス応答との連関を評価し、Pericyteから象牙芽細胞への分化と機能調節の詳細を明らかにする事を目的とした。 歯髄に存在する異なる細胞集団が構成する微小環境とその遺伝子制御およびシグナル制御機構を検討する事で、新規治療の確立に向けた基礎研究を展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジフテリア毒素による誘導性の象牙芽細胞死滅モデル遺伝子改変マウスとタモキシフェン誘導性Creによる細胞系譜解析法を用い、象牙芽細胞およびPericyteマーカーの細胞抗原を免疫染色により解析した。また小胞体ストレス応答分子であるATF6、IRE1、およびPERKの発現を解析した。遺伝子改変マウスを用いた実験で、象牙芽細胞の死滅後に歯髄の細胞稠密層にPericyteマーカーであるNG2と機械感受性イオンチャネルPiezo1を発現する細胞が集積局在することが明らかになった。小胞体ストレス応答分子のうち、ATF6は恒常的に象牙芽細胞に発現を認め、一方IRE1とPERKは発現に乏しかった。象牙芽細胞の死滅後は細胞稠密層の歯髄細胞でATF6、IRE1の両方の発現を認めたが、PERKの発現上昇は認めなかった。Piezo1陽性象牙芽細胞は、Pericyteならびに歯髄間質細胞が発生起源である可能性が示唆された。さらに、ATF6が象牙芽細胞で小胞体ストレスセンサーとして機能し、象牙芽細胞枯渇環境ではATF6とIRE1が歯髄細胞から象牙芽細胞への分化制御因子である可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究でこれまでに明らかにしてきた小胞体ストレス応答分子のうちATF6に着目し、象牙芽細胞の運命調節を明らかにする。Pericyteの細胞系譜解析実験でPiezo1ないしはATF6を抑制し、Pericyteの象牙芽細胞分化とその機能特性を解析する。具体的には、ミネラル分化実験により石灰化能をAlizarin Red染色およびvon Kossa染色で評価する。また各種ミネラルマーカーを用いたRT-qPCRを実施する。さらに、生体外でシングルセルレベルでガラス管を用いて細胞に直接機械刺激を実施し、機械刺激に対する応答を解析・評価する。
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