研究課題/領域番号 |
22K17059
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57030:保存治療系歯学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中西 惇 広島大学, 病院(歯), 助教 (20848064)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 組み換えタンパク質 / 骨補填材 / 細胞接着活性 / 抗炎症機能 / DPP / DMP-1 / 硬組織誘導能 |
研究開始時の研究の概要 |
炎症により広範囲に破壊された骨欠損部に骨補填材を使用し骨再生を促進する骨再生治療において、既存の骨補填材は骨伝導能、骨誘導能および生体適合性に課題が多く、幅広い症例に応用可能で良好な骨再生が期待できる標準治療の確立には至っていない。そこで既存の骨補填材の骨伝導能、骨誘導能を増強し、高い生体適合性を示す因子として、象牙質および歯槽骨の細胞外基質構成成分で石灰化に重要な役割を担う非コラーゲン性タンパク質である Phosphophoryn (PP) に着目し、遺伝子組み換えにより細胞接着活性を付与したハイブリッド組み換えPPによる既存の骨補填材への影響について解析を行う。
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研究実績の概要 |
歯性感染症による炎症によって生じた歯槽骨欠損部に骨補填材を使用する骨再生治療において、既存の骨補填材の骨伝導能、骨誘導能および生体適合性の課題を克服するものとして先行研究によって報告してきたハイブリッド組み換えPPの持つ細胞接着活性、抗炎症機能活性、硬組織誘導活性を応用することに着目し、本研究を行った。 歯性感染症で検出される代表的な菌のひとつであるグラム陰性菌は細胞壁外膜の構成成分にLPSを有し、LPSは生体内でマクロファージ等の免疫応答細胞の炎症反応を惹起する。先行研究ではLPS刺激マクロファージ炎症モデルにおいてハイブリッド組み換えPPが抗炎症機能を有することを、また本研究ではハイブリッド組み換えPPはLPSとの結合能を有することを昨年度報告し、この接着活性が抗炎症メカニズムの一つである可能性を示唆してきた。さらにハイブリッド組み換えPPはD-ガラクトサミン/LPS誘導性マウス敗血症モデルにおいて抗炎症機能を示すことも先行研究で明らかになっている。本年度はこの敗血症モデルにおける抗炎症機能メカニズムの解析および抗炎症機能領域の同定を目的に研究を行った。PPは象牙質の石灰化において重要な役割を示し、その硬組織誘導活性はアミノ酸配列中の特徴的なセリンーセリンーアスパラギン酸の長い繰り返し配列が機能領域になっている。LPS刺激マクロファージ炎症モデルでの抗炎症機能はこの長い繰り返し配列に依存しないことを先行研究にて報告している。本年度は組み換えPPの各機能領域の組み換えタンパク質、化学合成ペプチド、さらに組み換えDMP-1を用いてD-ガラクトサミン/LPS誘導性マウス敗血症モデルでの抗炎症機能領域の解析を行った結果、ハイブリッド組み換えPPの抗炎症機能領域はセリンーセリンーアスパラギン酸の繰り返し配列の長さに依存している可能性を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度の実験結果に対するトラブルシューティングを経て、新たな骨欠損モデルの確立について検討を行った。検討の結果、骨欠損モデルについてはマウス抜歯窩モデルを用いて、さらに歯性感染症による炎症を想定しマウス根尖性歯周炎モデルの確立や抜歯窩モデルにLPSを局所投与する手法を試みた。しかしながら昨年度の頭蓋骨欠損モデルの検討時に生じた問題と同様、サンプル間で適切に評価を行うに値する骨欠損や炎症性骨吸収のモデルを得ることができず、さらに昨年度から故障中の当該研究機関のマイクロCT装置が今年度も復旧のめどが立たなことなどもあり、骨欠損モデルについて新たな研究計画の立案が困難となった。以上の背景から研究計画にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、骨欠損モデルでの検討について、申請者らの先行研究等で行ってきたBMP-2移植マウス背部異所性骨形成モデルを用いた手法に代替えして行う予定である。このモデルにおいてLPSをBMP-2と同時移植することで、炎症を惹起し異所性骨形成が阻害されることが予備実験で明らかになっている。また、このモデルは手技も比較的安易なため、手技によるバイアスが小さくなることが想定されるため、今までの骨欠損モデルで問題となった課題が解決するものと考える。また、骨欠損部への移植を想定した担体として従来用いた担体と比較して、より多くのハイブリッド組み換えPPを含有した多機能担体を骨補填材として使用する検討も行っていく。具体的には高濃度に濃縮したハイブリッド組み換えPP溶液、骨基質タンパク質溶液とⅠ型コラーゲン溶液の混合物を凍結乾燥して作製することを予定している。これをマウス背部の筋膜中にも移植可能な骨補填材として使用する予定である。
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