研究課題/領域番号 |
22K17235
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57070:成長および発育系歯学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 祐士 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (50878270)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 小児 / 摂食嚥下 / 睡眠 / 摂食嚥下機能 / 呼吸機能 / 口腔機能発達 |
研究開始時の研究の概要 |
鼻や喉の通りが悪いことが原因で、口や頬などの顔や頭の筋力の低下や協調運動の不全により呼吸や食事に問題が生じる場合がある。これらの問題に対し、効果的な介入方法を確立することで臨床現場での応用を最終目標に据え、喉や鼻の通りにくいことが原因で食べたり飲みこんだりすること(摂食嚥下)の機能に問題を認める子どもを対象として、食事時の頭や顔の表面の動きと食材の動態を同時に解析ならびに数値化し評価することで呼吸や摂食嚥下の機能の関連性を明らかにし、適切な摂食嚥下機能の獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、鼻閉、アデノイド、口蓋扁桃肥大が原因で上気道通気障害を認める小児を対象とし、摂食嚥下時における頭頚部の体表面動作と試料の嚥下動態を解析して、呼吸が摂食嚥下機能に与える影響を詳細に調査することである。令和4年度は、3Dカメラを使用し摂食嚥下機能を含めた口腔機能の定量評価が可能となるシステムの構築のため、基礎的研究を実行し、以下の知見を得た。 1)口腔機能に問題のない小児と成人を被験者とし、洗口うがい時における口唇動作の比較研究を実施した。顔面正中に対し、両側口角の変位量から口唇動作を定量的に測定した。小児は、洗口うがい時の口唇動作に左右差を認める一方で、成人は、洗口うがい時の口唇動作に左右差を認めなかった。 2)運動機能に問題のない小児と成人を被験者とし、捕食時における頭部動作の比較研究を実施した。安静時と捕食直前の最大開口時の頭部の直線的移動量、水平的回旋角度、垂直的前傾角度を定量的に測定した。小児は成人と比較し優位に頭部動作が大きく、成人において、男性は女性と比較し、優位に頭部動作が大きかった。 これらの研究は3Dカメラを活用して摂食嚥下機能を含めた口腔機能の定量評価が可能であることを示唆しており、システムの確立に向けた技術的な課題は達成できたと考えられる。これらの研究成果は国際的学術誌に採択ならびに投稿予定である。 また、上気道通気障害部位の評価の為に小児のCBCTデータより上気道流体シミュレーションによる解析を実施した。そして、鼻閉、アデノイド、口蓋扁桃肥大が認められる小児において、嚥下時の通過障害の有無を検討し、呼吸機能の定量評価の構築を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、これまで解析が困難であった上気道通気障害部位の特定による呼吸機能の評価に加え、摂食嚥下時における頭頚部の体表面動作と試料の嚥下動態の同時解析による摂食嚥下機能を定量評価する点が特色である。このアプローチ法は過去に類例がなく、小児を対象とする場合は、さらに独自性が高いと言える。定量評価方法が確立し、評価に基づいた介入方法を提案することが可能となれば、呼吸機能の改善に伴う摂食嚥下機能の円滑な発育を促進し、小児期のQOLの向上に大きく寄与することができる。 そのためには、段階的に研究を実施していく必要がある。本研究で得られた成果の一部である洗口うがい時の口唇動作に関する研究成果は、英文誌(Journal of Oral Rehabilitation)にて令和4年9月22日に採択された。さらに、捕食時動作における研究に関しては、データを取りまとめ、現在、国際的学術誌に投稿予定である。口腔機能の定量評価システムの構築に関しては、当初の計画通りに進行している。 一方で、呼吸機能の定量評価に関しては、CBCTデータの取得はほぼ完了している。しかし、CBCTは被ばくを伴い侵襲的であることから、診察の結果、条件を満たすかを十分に検討した上で撮影している。従って、データの収集に時間を要し、さらに定量評価方法については現在も検討中である。また、より正確に統計学的検討を行いたいと考えていることから、条件を満たす患者が受診した場合は、引き続き協力を依頼する予定である。最終的に、得られた結果を取りまとめ、国際的学術誌に投稿や学会にて報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、上気道通気障害ならびに摂食嚥下機能障害に対する効果的な介入方法を確立して臨床応用へ展開することを最終目標に据え、鼻閉、アデノイド、口蓋扁桃肥大が原因で摂食嚥下機能に問題を認める小児を対象とし、試料嚥下時における頭頚部の体表面動作と嚥下動態に関する定量化と同時解析により、呼吸機能と摂食嚥下機能の関連性を解明し、適切な摂食嚥下機能の獲得を目指す。そこで、①小児期に上気道通気障害がある場合、食物の咀嚼や嚥下の過程で呼吸動作も加わることから、嚥下時に関与する口腔ならびに咽頭の体表面動作と嚥下動態に異常を呈するのではないか。②鼻閉、アデノイドは口呼吸の原因であることから、口唇の弛緩・離開、低位舌を呈し、これらに関与する筋群は常時低緊張になるため、協調運動の不調和により、摂食嚥下機能に悪影響が生じるのではないか。について探索している。 本年度では、3Dカメラを使用し摂食嚥下機能を含めた口腔機能の定量評価が可能となるシステムの構築が実現しており、研究結果の一部は、Comparison of mouth rinsing performance between adults and children using a contactless vital sensing camera という題名にてJournal of Oral Rehabilitation に掲載された。今後も口腔機能の定量化によりデータを蓄積し、論文ならびに学会での報告を行っていく。さらに、CBCTデータも蓄積しており、上気道通気障害部位の特定も進めている。蓄積したデータより、呼吸機能の定量化して、摂食嚥下機能を含めた口腔機能との関連性を統計学的に検討する。十分な知見を得られ次第、論文ならびに学会により報告予定である。
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