研究課題/領域番号 |
22K17266
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
木野 志保 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30901558)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 生活保護 / 歯科受診 / 口腔保健格差 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者を対象とした10年に渡る大規模疫学縦断調査を用いて、まず①生活保護受給高齢者と低所得一般高齢者の間の口腔の健康格差の実態を把握する。次に②無償で医療受診できる生活保護受給者が低所得一般高齢者と比較し、必要な歯科治療受診の割合が高いかを検証する。最後に③生活保護受給とレセプトデータから抽出した実際の歯科受診との因果関係を明らかにする。本研究結果が今後の高齢者の口腔保健向上に向けての問題提起と健康格差是正に向けての政策提言につながることが期待できる。
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研究実績の概要 |
生活保護受給者は医療扶助制度により、必要な歯科受診は無償で受けられる。この制度により、生活保護受給者の歯科受診に対する経済的障壁を軽減する可能性がある。そこで、今年度は以下の2つの研究を実施した。データは、日本の高齢者を対象とした2019年大規模疫学調査を使用し、ロバスト分散を用いたポアソン回帰分析で共変量を調整し解析した。 まず「生活保護受給と満たされない歯科医療ニーズの関連」を解析した。調査対象者のうち、33.3%が過去6か月以内に歯痛があったと回答し、そのうち51.3%に満たされない歯科医療ニーズがあった。また、歯痛のある者の中で、非受給者の半数、生活保護受給者の7割で満たされない歯科医療ニーズがあった、共変量を考慮した分析において、生活保護受給者は非受給者に比べて1.24倍(95%信頼区間1.17-1.32)満たされない歯科医療ニーズを多く持っていた。 次に、生活保護受給が歯科受診と関連しているかどうかを解析した。共変量を調整して分析した結果、生活保護受給者は、何らかの理由での歯科受診が24%(Prevalence Ratio: 0.76、95%信頼区間:0.64、0.90)、治療のための歯科受診が23%(Prevalence Ratio:0.77、95%信頼区間:0.65、0.92)、予防のための歯科受診が21%(Prevalence Ratio:0.79、95%信頼区間:0.65、0.95)、非受給者と比較して、少ない傾向にあった。 本研究から、生活保護受給者は歯科治療費が免除されているにも関わらず、非受給者と比較して満たされない歯科医療ニーズが多く、歯科受診が少ないことが明らかになった。今後の研究では、歯科受診行動を推進するために、生活保護受給者が歯科医療にアクセスする際の障壁を明らかにする必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、「生活保護受給と満たされない歯科医療ニーズの関連」を明らかにした研究成果を日本公衆衛生学会にて発表し、また「生活保護受給者と非受給者の歯科受診行動格差」を明らかにした研究成果は現在国際誌にて査読中である。 以上の通り、概ね予定通り順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、歯科受診行動のみならず、生活保護受給者と非受給者の間の口腔保健格差の実態を明らかにし、より高度な分析方法を用いて生活保護受給の開始が歯科治療受診を促したかを明らかにする因果推論による検証を行っていく予定である。
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