研究課題/領域番号 |
22K17274
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
|
研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
佐藤 涼一 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80801472)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | フッ化物 / 予防歯科学 / エナメル質 / 象牙質 / ハイドロキシアパタイト / モノフルオロリン酸ナトリウム / マイクロラジオグラフィ / 根面齲蝕 / 酸蝕症 |
研究開始時の研究の概要 |
若年者の酸蝕症や高齢者の根面う蝕などまだ予防法が確立せず既存のフッ化物応用法では十分な予防・抑制効果が得られない疾患が急増しており新規の予防法開発が急務となっている。本研究はNaFよりも歯質深部ハイドロキシアパタイト(Hap)への耐酸性向上効果が優れていると報告されているモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)を応用し、予防法が確立していない酸蝕症や根面う蝕の新規予防法を開発することを目的とする。本研究ではNaFよりも生体毒性が低く、歯質の表層だけではなく深部にアプローチできる高濃度MFPに着目し、従来方法を上回る歯質耐酸性を獲得できる新規フッ化物応用法の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
近年、若年者の酸蝕症や高齢者の根面齲蝕など予防法が確立せず既存のフッ化物応用法では十分な予防・抑制効果が得られない疾患が急増しており新規の予防法開発が急務となっている。モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)の臨床応用は歯磨剤の成分に限られ、低濃度の報告がほとんどで歯面塗布応用を想定した高濃度(9000ppm)の報告は存在しない。本研究は「NaFよりも歯質深部のハイドロキシアパタイトへの耐酸性向上効果が優れているモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)を高濃度で応用し、予防法が確立していない酸蝕症や根面齲蝕の新規予防法を開発すること」を目的とした。 牛歯エナメル質および象牙質を試料として、臨床で実施されているフッ化物歯面塗布法(NaF, APF)と本研究で新規開発した歯面塗布法(MFP:9000ppm,pH7.0, AP-MFP:9000ppm,pH3.6)の予防処置後の耐酸性を比較した。表面性状および耐酸性の測定は3Dレーザー顕微鏡での面粗さ(Sa)、欠損深さ(μm)、電子顕微鏡(SEM)観察、コンタクトマイクロラジオグラフィ(CMR)による脱灰深度(μm)、ミネラル喪失量を行った。さらに電子線マイクロアナライザー(EPMA)による原子マッピングでフッ化物イオンの歯質内動態を探り、X線光電子分光法(XPS)による結合エネルギーピークから歯質表層におけるMFP応用後の生成物の推定も実施した。SEM観察、3Dレーザー顕微鏡測定、コンタクトマイクロラジオグラフィーおよび表層のXPS解析の結果、MFP群およびAP-MFP群の処置により従来法同様にエナメル質および象牙質の耐酸性向上が認められた。AP-MFP法の耐酸性はAPF法には及ばないものの、歯質表層のみではなく深部に作用が可能であり、表層にAPFと同等のフッ化物イオンを保持できる優れた性質を持っていることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度に予定していたすべての実験・解析は円滑に実施され完了し、成果として2022年度には原著論文5編、2023年度(本年度)には原著論文4編を査読ありのオープンアクセス英文誌へ投稿し、アクセプト・出版された。高濃度AP-MFP塗布は歯質の深部に作用し生体安全性の高い新規フッ化物応用法を開発することができた。MFPはNaFと比べて表層の耐酸性が劣るが、歯質の深層に浸透し耐酸性を発揮することが出来る先行研究の所見は、本研究のAP-MFP群の実質欠損量やSEMの観察像、CMRの所見と一致していた。さらにAP-MFPの耐酸性は従来法のAPF法には及ばないものの、エナメル質表層のみではなく深部に作用が可能であり、歯の表層にAPFと同等のフッ化物イオンを保持できる優れた性質を持っていることが明らかになった。本研究よりAP-MFPは中性のMFPをリン酸により酸性域にすることでリン酸カルシウムの生成やハイドロキシアパタイト中の置換効率を向上し、MFP化ハイドロキシアパタイトの生成を促進する機序を持つことが示唆された。象牙質の所見でもAP-MFPは従来法のAPFよりも象牙質のミネラル喪失量および脱灰深度を減少させ、定性的と定量的の両方で耐酸性を向上させることが明らかとなった。今年度はエナメル質だけでなく象牙質においてもMFPの有効性を示すことができ当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
エナメル質および象牙質において、本研究で新規開発した「酸性化モノフルオロリン酸ナトリウム(AP-MFP)の歯面塗布法」が歯質深層に耐酸性を付与できることが明らかとなった。MFPの作用機序にはまだ不明な点が多く、特に今回歯質表面のSEM観察で認められた二次粒子の組成や歯質深部へ浸透するメカニズムなどを解明していきたい。また、本研究の方法が従来のう蝕予防としての応用だけではなく、飲食物や職業性の酸蝕症の予防法として有効であるかを検討していきたいと考えている。
|