研究課題/領域番号 |
22K17318
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
山本 香織 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (70649011)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 結核 / 分子疫学 / 地域 / 感染伝播 / 遺伝子型別 / クラスター / 地区類型 / 都市部 / 地域差 |
研究開始時の研究の概要 |
結核は我が国における最大の細菌感染症であり、長期にわたり中蔓延状態を持続してきた。結核の原因となる結核菌はヒトからヒトへ感染伝播するため、結核患者からの感染の広がりを抑止することが重要である。地域の社会経済的特徴の違いは、結核の発生状況の地域差を生じさせる一要因と考えられ、外国人の流入や再開発によって発生する流動的な都市の構造変化は、地域居住者の構成だけでなく結核の発生動向にも変化をおよぼすと考えられる。本研究では、網羅的に収集した結核患者情報と患者由来菌株の遺伝子情報、および地域居住者の特性を分析し、変化する都市構造の中での結核発生状況とその伝播関係の地域的変化を捉えることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、網羅的に収集した結核患者情報と患者由来菌株の遺伝子情報、および地域居住者の特性を分析し、変化する都市構造の中での結核発生状況とその伝播関係の地域的変化を捉えることを目的としている。 令和5年度は地域居住者が社会経済的に特徴的なあいりん地域と、外国生まれ患者について検討した。 ①2012-21年にあいりん地域で分離された結核菌464株のうち、VNTR分析により見いだされた9つのクラスター形成78株について、クラスター内の菌株間でのゲノム比較を行った。78株のうち58株(74.4%)に近縁株が存在していた。9クラスターのうち、近縁株が存在していたのは8クラスターであり、ゲノムネットワーク図からは、複数の近縁株グループが混在しているクラスターも確認された。これらの結果より、あいりん地域内で患者登録時には疫学的な関連が不明であった結核患者間で感染伝播が起こっていたことが示唆された。 ②2012-21年に大阪市の40歳未満結核患者から分離された554株についてVNTR分析を行った。554株のうち161株(29.0%)が51クラスターを形成し、外国生まれ患者由来171株でクラスターを形成したのは10株(6%)であり、外国生まれ患者の多くは国内での感染伝播に関与していないと考えられた。一方で、外国生まれ患者株と日本生まれ患者株で形成された5 VNTRクラスターのゲノム解析の結果、4クラスターで外国生まれ/日本生まれ患者間での感染伝播が示唆された。外国生まれ患者は今後の増加が見込まれ、日本人と外国人の結核感染伝播について引き続き注視していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度の予定としていた令和2年度国勢調査の結果による社会地区類型の構築を行い平成22年度の社会地区類型からの変化を検証する予定であったが、必要な情報の収集に留まっている。 結核菌株の分析については、2017-2022年の分離株についてVNTR型別によるスクリーニングを終え、2012-21年の4742株のデータが揃い、ゲノム解析の対象として最近の感染による伝播の可能性のある2年以内のVNTRクラスターを形成する308株を抽出した。そのうち、156株についてはゲノムデータ取得済みであり、予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度国勢調査データをもとに社会地区類型を構築し、地区類型ごとの患者数および患者疫学情報(年齢、性別、国籍等)を分析しすることで、結核患者の頻出地域とその地域の患者の疫学的特徴を捉える。先行研究で得た2012-16年の社会地区類型における結核罹患率や患者特性の変化について検討を行う。また、VNTRデータおよびゲノムデータを元に、地域内および地域間での感染伝播について、どのような居住者特性の地域において結核感染伝播が生じるのか、リスク要因を探索する。
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