研究課題/領域番号 |
22K17349
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
八尋 隆明 大分大学, 医学部, 講師 (60753217)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | バングラデシュ / デング出血熱(DHF) / COVID-19 / デングウイルス / SARS-CoV-2 / 重複感染 / ADE / 迅速抗原検出システム |
研究開始時の研究の概要 |
バングラデシュにおいて、デング出血熱(DHF)が急増しており、早急な原因メカニズムの解明と対応策が喫緊の課題である。DHFの急増による原因は不明であるため、様々な環境要因を解析し、デングウイルス単独感染とデングウイルスとSARS-CoV-2重複感染による抗体依存性感染増強(ADE)や重複感染を生じたデングウイルスの特徴を全ゲノム解析について評価する。同時に、対応策として、発展途上国で運用可能となる迅速かつ適切な医療提供システム(「抗原検出イムノクロマトキット」または「迅速モバイルPCR法」)の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、①バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の原因メカニズムの解明と②発展途上国で運用可能なマルチ抗原検出イムノクロマトキットの作製による迅速診断システムの開発である。2022年度の①の研究成果として、バングラデシュで急増するデング出血熱(DHF)の現状を把握するために、重要な流行国の情報を収集し、バングラデシュで発生したデング熱ウイルスの疫学データとCOVID-19流行期感染者数について、感染パターンを他の主要流行国と比較した。デング熱の主要流行国では、2020年と比較して、2021年のデング熱感染者は全体的に約36%減少していた。しかし、バングラデシュは、COVID-19パンデミックの2年目(2021年)にデング熱患者数が増加していた。さらに、ラテンアメリカの国々とは対照的に、東南アジアの国々では、デング熱患者数/人口100万人とCOVID-19患者数/人口100万人の間に強い正の相関を確認した。この疫学データ解析について取り纏め、投稿した我々の論文が国際誌に掲載された(Khan S, Akbar SMF, Yahiro T,et al., Int J Environ Res Public Health. 2022, 10768)。 臨床検体の分析については、まず臨床検体を収集するための手続きを実施し、300検体以上の血清サンプルを収集した。その後、DHFとCOVID-19の共感染を確認するために血清学的解析を実施した。DHF患者の約半数以上がSARS CoV-2 抗Nucleocapsid protein IgG抗体の陽性を示したことから、DHFとCOVID-19の共感染者が予想以上に多いことが明らかになった。血清型解析(1-4型)については、RT-pPCRにて解析を進めている。また、デングウイルスの全ゲノム配列解析も順次実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「デングウイルス感染による重症化の分子メカニズムの解析と迅速診断システムの開発」は、大分大学、バングラデシュ、ダッカのBangabandhu Sheikh Mujib Medical University(BSMMU)との共同研究課題として、プロジェクトの永続的アプローチの構築を確立した。バングラデシュでIRB(Institutional Review Board)の許可を得ることができ、血液の採取、血清サンプルの収集は確実に遂行できた。血清が採取された全てのデング熱患者検体(約300検体)において、この研究で重要な臨床プロファイルも入手した。これらの血清の一部(約100検体)は、既に当大学に輸送され解析を進めている。この解析結果をもとに、バングラデシュのデング熱について新しい知見を得ることができた。さらに全ての検体において、データが解析されれば、さらに精度の高い知見となる。 現在のところ、今後予定されている実験も計画通り遂行予定である。しかし、バングラデシュから輸送できていない残りの検体(約200検体)も存在する。この検体の輸送を早期に実施し、全ての検体において解析を遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、バングラデシュで流行したデング熱ウイルス株を次世代シーケンサーにて全ゲノムを解析し、世界の流行株との比較解析を実施する。また、抗体依存性感染増強(ADE)の評価として、デング熱ウイルス を感染させた培養液にSARS-CoV-2抗体を含む血清を添加し、培養上清について成分の比較解析を実施する。 本研究の目的②発展途上国で運用可能なマルチ抗原検出イムノクロマトキットの作製についても、順次準備を進める。万が一、イムノクロマトキット作製過程でモノクローナル抗体の作製ができなかった場合、ポリクローナル抗体の利用を模索する。または、簡易的遺伝子検査の構築についても検討をする。
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