研究課題
若手研究
本研究では、海外での乳児への虐待予防を目的としたbest practiceに関する文献検討を行う。続いて、特定妊婦への支援を実践する、医療・保健・福祉の分野を対象に、特定妊婦の範囲や支援内容、連携についての実態調査を行う。さらに、多機関連携における課題抽出を目的とした乳児虐待通告事例のケース分析を行う。最終的に、日本における虐待予防を目的とした特定妊婦への支援における多機関連携モデルを開発し、提案する。本研究で得られる成果は、国内で虐待予防をする上で重要となる、切れ目ない支援の体制を確立することに大きく貢献できると考える。
本研究の目的は、乳児虐待を予防するために、生活上の困難をもった妊婦(要支援妊婦、特定妊婦等)を多職種によって包括的に支援する連携モデルを開発することである。この目的を達成するため、令和5年度は以下3点について実施した。1.特定妊婦に対する支援実態の検証:都内4自治体の保健・福祉領域の部署において、自治体別乳児虐待通告事例(各自治体20件、計80件)に関して、妊娠期からの継続支援における組織課題の抽出、改善プランの立案を目的として、ケース分析を行った。ケース分析結果は、全4自治体で共有し、ディスカッションを行った(2023年8月、2024年2月)。2.特定妊婦に関する支援実態:妊娠中に特定妊婦、あるいは要支援妊婦として行政サービスを受けたことのある当事者(例;幼少期に被虐待歴をもつ母親、配偶者からの暴力経験をもち面前DVによる通告歴をもつ母親等)への個別インタビューを開始した。行政サービスにおけるハイリスクアプローチは、妊婦へのスティグマを生じており、結果として行政サービスとの信頼関係の形成が困難となり、支援の切れ目が生じていたことが分かってきている。特に、配偶者からの暴力に対する行政サービスは、当事者のニーズを満たすほどには行き届いていなかった。今後もインタビューは継続しデータを蓄積することで、当事者が安全・安心を感じられるような環境で生活していくために、どのような行政サービスが望ましいのか、その在り方について検証予定である。3.乳児虐待予防を目的とした妊婦への支援における多職種連携モデル案:1および2の結果に基づき、多職種連携モデル案を作成し、主に国内学術集会において、シンポジウムや口頭発表によって、普及及び有識者とのディスカッションの機会を得た。
2: おおむね順調に進展している
令和5年度の計画では、令和4年度に集めた1歳未満の虐待通告ケースについて、それらの支援体制等構造的課題についてケース分析し、当事者へのインタビュー調査を行い、その結果に基づいて多職種(多機関)連携モデル案を作成することを計画していた。令和5年度内で、計画はすべて遂行できており、計画通り進んでいると考える。
令和6年度は、特定妊婦等への支援実態を明らかにするため、妊娠中に特定妊婦、あるいは要支援妊婦等として行政サービスを受けたことのある当事者への個別インタビューを継続し、多職種連携モデル案を改善し、最終版とする。本研究で得た知見は、行政サービス提供者である専門職等を対象に、研修にて普及の機会を設ける。知見の普及拡大を目的として、動画教材も作成予定である。また、今後の国際共同研究への発展を目指し、国際学会への参加によって海外の研究者との交流機会を持つとともに、国際学術雑誌への投稿を行う計画である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (4件)
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