研究課題/領域番号 |
22K17591
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 北海道文教大学 |
研究代表者 |
佐藤 明紀 北海道文教大学, 医療保健科学部, 教授 (40585585)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 運動 / 腫瘍微小環境 / 腫瘍免疫 / リハビリテーション |
研究開始時の研究の概要 |
入院がん患者に対するリハビリテーションは2010年より保険適用となり、がん患者の身体的、精神的健康を支えている。しかしながらリハビリテーションによる運動負荷が、がんに対しどのように作用しているかは全くの不明である。そこで本研究では担がんマウスに行動制限を実施し、腫瘍を直接的に解析することで運動とがんの関係を探る。特に、腫瘍微小環境に侵入する免疫担当細胞に着目し、マイオカインなどの運動で変動する因子がどのように腫瘍免疫機構を制御するかを明らかにする。マウスモデルより得られた知見はリハビリテーション実施患者の臨床検体で解析し、得られた結果を統合し運動・免疫担当細胞・腫瘍の三位一体の関係を解明する。
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研究実績の概要 |
がん患者に対するリハビリテーションは2010年より保険適用となり、がん患者の身体的・精神的健康を支えているが、リハビリテーションによる運動種類や運動負荷量ががん細胞や身体に与える影響は不明である。そこで本研究では担がんマウスに運動制限を実施し、腫瘍を直接的に解析することで運動とがんの関係を探ることとした。特に、腫瘍微小環境に侵入する免疫担当細胞に着目し、運動制限により変動する因子が腫瘍免疫機構を制御する影響について明らかにする。マウスモデルより得られた知見はリハビリテーション実施患者の臨床検体で解析し、得られた結果を統合し運動・免疫担当細胞・腫瘍の三位一体の関係を解明することとした。 これまでにBALB/Cマウスに、マウス乳がん細胞株である4T1を移植により生着することを確認している。飼育ケージの狭小化は苦痛の条件を変更せずこれまでの50%の狭小化から約75%まで制限する環境を準備できた。移植後の経過に伴い運動量は徐々に減少に加え、食事・水分摂取量も合わせて減少し、生存日数が短縮されることが確認できた。しかり、4T1移植後に運動制限を実施しない群と比較すると、生存日数において運動制限を行った群の方が生存日数が有意に短縮されるという興味深い結果を示している。 一方で、マウスの筋力の評価の指標となるWire hang testでは、運動制限群の筋力が有意に低下していることからがん生着後の運動制限が筋力に与える影響を示している。さらに腫瘍免疫細胞の解析を進めたところ、骨髄由来制御細胞(MDSCs)の発現は、運動制限を行った群で高値となる特徴的な所見を変わらず認めている。 2023年に得られた結果を現在まとめており、2024年11月に北海道函館市で開催される第7回日本がん・リンパ浮腫理学療法学術大会の特別企画において、「がん領域の運動と免疫機構の橋渡し」としてこれまでの研究報告が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
先行研究により、運動実施による腫瘍形態学的に成長が遅延する効果については報告があったが(Erik W. et al, Oncotarget. 2020)、今回は自発行動を制限するために行動範囲を50%以上制限するためアクリル板を用いて行動範囲を狭小化する方法を用いたが、2023年度は約75%までの制限した環境下で実験を進めることができた。 上記条件でマウスの乳がん細胞株である4T1を移植し、コントロール群と運動制限群を比較し生存率を生存曲線を確認したところ、運動制限している群の方が有意に生存期間が短い結果を示した。 一方で、マウスの筋力の評価の指標となるWire hang testでは、運動制限群の筋力が有意に低下していることから、がん生着後の運動制限が筋力に与える影響を示している。腫瘍免疫細胞の解析を進においては、骨髄由来制御細胞(MDSCs)の発現は、運動制限を行った群で高値となる特徴的な所見を変わらず認める特徴を示している。 MDSCsは、がん、感染症、慢性炎症および外傷性ストレス時の免疫反応を制御し、既に多数のがんで同定が確認できており、腫瘍微小環境に誘導され、エフェクター細胞の免疫応答を抑制することも報告されていることから、2024年度はヒトを用いた検討準備も進める方針である。 マウスの運動範囲を約75%まで狭小化する準備に時間を要すこと、またヒトを用いた研究準備に時間を要していることから、研究進捗としては「遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年までの研究において、自発行動を制限するために行動範囲を約75%まで制限するためアクリル板を用いて行動範囲を狭小化することができ、本条件で今後さらに研究を進めることとしている。また、今年度はコントロール群(がん移植、運動制限なし群)と運動制限群において、運動制限群の方が生存率が短縮されるという興味深い結果を示していること、一方でWire hang testにおいて運動制限群の方が有意に筋力低下を認めていることから、形態学的な変化にたいする特徴を明確にする必要がある。腫瘍免疫学的応答の特徴として、これまでに行動制限に伴い、骨髄由来制御細胞(MDSCs)の発現が高値となる特徴的な所見が明らかとなっていることは変わらず。これを踏まえて前述同様の解析内容にてMDSCsの変化を観察するとともに、MDSCs以外の腫瘍免疫学的応答の変化についてさらにある解析を進める。特に制御性T細胞(Treg)と運動療法の関連のまとめについて近年報告がまとめられていることから、行動制限に対しても特徴的な所見が得られるか検討する。 今年度はヒトを対象とした腫瘍免疫学的応答の検討も検討しており、これまでに軽度の運動と高強度の運動ではCD4の発現量に変化を認める結果をあることから、さらに症例準備を進めMDSCsや他の腫瘍免疫応答に与える効果や特徴の詳細を検討し、運動療法の病態を説明できるか検討を進めたい。
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