研究課題/領域番号 |
22K17671
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
下竹 亮志 筑波大学, 体育系, 助教 (70801299)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 根性 / 系譜学 / 根性論 / スポーツ / 学術 / 経済 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、1964年東京オリンピック前後から現在に至るまでのスポーツ、学術、経済の諸言説を記述することで、根性論がいかなる経路と論理構成のもと、なぜ日本社会に定位したのかを明らかにすることである。具体的には、(1)隆盛期:1964年東京オリンピック前後、(2)定着期:1970年代、(3)反転期:1980年代、(4)潜伏期:1990年代以降の4つの時期に分けて分析を行う。根性論の複雑な意味の網を解きほぐす作業は、「ブラック◯◯」と言った形でハラスメント、過労自殺、サービス残業などが問題化されている日本社会のより良き未来を創造していくための試金石となるはずである。
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研究実績の概要 |
本研究は1964年東京オリンピックを契機に隆盛したとされる根性論を題材に、それがなぜいかにして今日まで連綿と続いてきたのかという問いを明らかにすることを試みるものである。具体的には、スポーツ、学術、経済の諸言説を系譜学的に記述することを通して、根性論がいかなる経路と論理構成のもと、なぜ日本社会に定位したのかを明らかにすることを当初の目的としている。 令和5年度は主に先行研究の整理とスポーツ界の根性論に関する分析枠組みの構築に焦点をあてた。前者の先行研究の整理からは、2つの論点を見出した。第1に、先行研究が「個人の抑圧、従順の強制、不合理性、非科学性」といった今日的な根性論の成立に果たしたスポーツ界の役割を重視していること。第2に、そうであるがゆえに今日的な意味での単純明快な根性論(あるいはそれと批判的に対峙する反根性論)を暗黙の拠り所としていることである。 第1の論点について、筆者は既にスポーツ界の根性論に関する実践や言説を経済界が誤読、 転用していったことを明らかにしている。しかし、第2の課題については、これまで筆者自身も暗黙のうちに前提としていた拠り所であり、それを乗り越えるための分析枠組みを構築することが必要である。そこで、「根性論-反根性論」という二項対立的な枠組みではなく、その間でスポーツ界の実践や言説それ自体に「根性論」的なものが見出せるのではないかと考えた。したがって、根性論に対して全面的に賛同するのでも反対するのでもないにもかかわらず、それが根性論として読み解かれてしまうようなスポーツ界の微妙な実践や言説について分析を行う必要性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、(1)新聞記事を題材に「根性」がどのような社会的文脈と結びつき、いかに語られているのかについて全体的な傾向を引き続き分析すること。(2)そのなかで反(非)根性論の系譜がどのように語られてきたのかを、スポーツ界を中心として分析すること。(3)全体的な傾向に照らして、重要な社会的文脈と関連する図書を時系列的に読み解き分析すること、の3つの作業を予定していた。しかし、本科研費以外の研究・執筆等の影響で、特に(1)と(3)に関してはほとんど手をつけられなかった。とはいえ、(2)を分析するための枠組みについては、大方見通しが立ち、スポーツ界における資料には重要な論点が含まれていることが分かってきている。以上から、現在の進捗状況をやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要にも記したように、「根性論-反根性論」という二項対立的な枠組みではなく、その間でスポーツ界の実践や言説それ自体に「根性論」的なものを見出していく必要がある。それは、「根性論―反根性論」の枠組みのように、スポーツにおける実践や語りを短絡化することなく、根性論と反根性論の間で「根性論」的なものがいかに根強い参照点として存続しているのかを捉えることでもある。必ずしも根性論に回収されない要素を含みこむスポーツ界が、単純な根性論の世界として短絡化されてしまう道筋を示したいと考えている。そのために、今後はスポーツ界の資料を読み解きつつ、「根性論」的なものの系譜を跡づける作業と、資料から分析枠組みをより精緻化する作業を並行して行いたい。また、近年になればなるほど、根性論は直接的に語りづらくなっていることが予想されるが、「根性論」的なものが消え去ったわけではないと考えている。そのため、「根性論」的なものが他の概念や社会的文脈と結びつくなかで、どのように潜在しながら系譜を紡いでいるのかについても、分析を進めていく予定である。これらの作業を進めながら、随時学会等での発表や論文執筆の機会を確保できるよう努めたい。
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