研究課題/領域番号 |
22K17687
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
木戸 康平 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (50822730)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 骨格筋 / TXNIP / 糖取り込み / 筋収縮 / 運動 / タンパク質合成 |
研究開始時の研究の概要 |
TXNIP(チオレドキシン結合タンパク質)は、脂肪細胞の糖取り込みを抑制することが報告されている。さらに、心筋ではタンパク質合成を抑制する可能性も示唆されている。つまり、このTXNIPは、糖取り込みと筋タンパク質合成を同時に抑制している可能性があるが、骨格筋での役割は不明である。本研究では、「運動による筋のATP消費とIGF-I増加がTXNIPの発現量を減少させ、その結果として、骨格筋の糖取り込みとタンパク質合成を上昇させる」との仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
運動は、骨格筋の糖取り込みを促進し、血糖コントロールを改善する。また、筋タンパク質合成を促進し、筋量の増加も引き起こす。しかし、運動が骨格筋の糖取り込みと筋タンパク質合成を同時に促進する分子機序は不明である。TXNIP(チオレドキシン相互作用タンパク質)は、脂肪細胞の糖取り込みを抑制し、心筋ではタンパク質合成の抑制に作用することが示唆されている。さらに我々は、単回の運動が骨格筋のTXNIP発現量を低下させることを明らかにしている。つまり、運動はTXNIP発現量を低下させることで糖取り込みと筋タンパク質合成を高めていることが推測できる。そこでまずは、雄性の野生型マウスとTXNIP欠損マウスを用いて、TXNIPが骨格筋の糖取り込み及び筋量に及ぼす影響を確認した。マウスの骨格筋の糖取り込み速度は、放射性同位体で標識された代謝できない糖(3H-2-Deoxyglucose)を麻酔下にて眼窩投与し、筋に蓄積した3Hを検出することで測定した。同時に、解剖時に両遺伝子型のマウスの前脛骨筋等を採取し、その湿重量を測定した。その結果、遺伝子型間で骨格筋湿重量に有意な差は認められなかったが、安静時の糖取り込み速度は、野生型マウスと比較してTXNIP欠損マウスの方が有意に高値を示した。次に、雄性の野生型マウス及びTXNIP欠損マウスの長趾伸筋を電気的に収縮(運動模倣刺激)させ、筋収縮による糖取り込みの促進に対するTXNIPの役割を確認した。その結果、筋収縮は、骨格筋の糖取り込み速度を有意に高めたが、その増加の程度はTXNIP欠損マウスで有意に低値を示した。これらの結果から、TXNIPは骨格筋の糖取り込みを抑制する因子であり、単回の運動はTXNIP発現量の低下を介して骨格筋の糖取り込みを促進している可能性が示唆された。一方、TXNIPの欠損は筋量には影響しないことも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画当初に予定していた、TXNIPが骨格筋の糖取り込みと筋量調節に関与するのかについて遺伝子組み換えマウスを用いて検証することができた。さらに、筋収縮による骨格筋の糖取り込み促進に対するTXNIPの役割も明らかにした。これらは、運動がTXNIP発現量の減少を介して糖取り込みを促進するという仮説を一定程度裏付ける結果となった。よって、現在まで概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究にて、筋収縮に伴う糖取り込みの促進に対するTXNIPの役割が明らかになった。一方で、筋収縮後のタンパク質合成促進に対するTXNIPの役割については不明である。さらに、本年度は、運動模倣刺激として筋収縮を用いたが、トレッドミル走行等の運動に対する応答が必ずしも筋収縮を用いた実験で得られる結果と同じとは限らない。そこで、今後の研究では、筋収縮によるタンパク質合成の促進に対するTXNIPの役割を検証した上で、トレッドミル走行等の運動を用いて筋収縮と同様の検証を行い、運動による筋内TXNIPの発現量低下と、糖取り込み・タンパク質合成の促進との因果関係を明らかにする。
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